大人オリジナル小説

Re: 終わらない戦い ( No.149 )
日時: 2011/02/26 11:28
名前: 鈴蘭


榛名は課題をやっているふりをして、咲恵の話をずっと聞いていた。
時々洵のほうを向きながら。
(美紅ちゃんねぇ…私も正直嫌いなんだけどさー…今回は綾ちゃんも悪いというか…どっちもどっちだよなぁ…帆波脅したって言うし…)
などと考えていた。そこで初めて手が止まっていたことに気がつく。
(やばっ!まだ半分ぐらいしか終わってないし!)


「マッチィ〜…分かんない」
数学は榛名が一番嫌いな科目だ。二番目は理科。理数系とは遠く離れた存在だ。一番得意なのは英語。小学校5年からやっているだけのことはある。この前の定期テストで榛名は赤点を取ってしまった。そのテスト直しが今回の課題なのだが…そのテストの答え合わせの時榛名は運悪く風邪で休んでしまったのだ。そのため一から計算しなおさなければいけない。なんてめんどくさいんだ。
「話してる途中だけど…まぁいっか。何ー…どれ?」
「これ…」
「それは…………分からん☆」
あはっ、と笑う香奈美。
「ちょい町田さんふざけてんの?(黒笑)」
榛名、ブラック降臨。町田さん=香奈美。本名を町田香奈美と言います。町田からマッチというあだ名が付けられました(いらない情報でした)
「ごめんっ、本当に分かんないの!」

「えぇ〜……じゃ、ガジョ教えてー」
いきなり名前を呼ばれたのでびっくりする咲恵。
「!ようし、このガジョベー様が教えてやろう!」
咲恵はいつものテンションだ。
「何々…?武さんは、遥さんに十五秒後に追い付きました…?」
問題文を読んでいく咲恵。
「……知るかそんなもんっ!!!」
ばしっ、と紙を投げる咲恵。
「ちょいちょいちょいガジョ!?何してくれちゃってんの!?」
うわー…とか言いつつ榛名が紙を取りに行く。
「あ…ごめんごめん…さきタンドジっちゃったぁ」
てへっ、と右手で頭を小突く咲恵。心なしか声の調子も変わっている。しかも自分のことを「さきタン」と呼んでいる。
「その声何だぁぁぁ!!」
すかさず香奈美のツッコミが入る。
「わぁ〜…かなちゃんが苛めるーぅ」
わぁ〜…迫真の演技。
「かなちゃんって呼ぶなぁぁぁ!!」
香奈美は顔を真っ赤にさせて、机を持ち上げようとする。
榛名はそれを見て机をバンバン叩きながら笑っている。

「はぁ〜…いや〜笑った笑った」
榛名は上機嫌。
「本当〜笑ったねぇ〜」
咲恵も上機嫌。
「………」
香奈美は不機嫌。

「もー、マッチもそんなに怒らなくても良いじゃん」
榛名が香奈美をなだめる。
「う゛っ…」
香奈美はいまだに項垂れている。
「あ。良いこと思いついた!」
榛名が立ち上がる。





「ガジョが、こっちに戻ってきてくれたら許してあげる!」






榛名は、にこりと笑って香奈美のほうを向いた。
「これでどう?マッチ」
香奈美は榛名のほうを向かず、
「いいんじゃないの?」
と答えた。

「まったく素直じゃないんだから……






で?ガジョどうすんの?」




「えと…行っても、いいの?」




榛名はにんまり笑って、





「勿論!!」





といった。




その返事を聞いて、咲恵は





「じゃ、じゃあ宜しくお願いします?」





――日常が、戻ってきた―――