大人オリジナル小説
- Re: 終わらない戦い ( No.176 )
- 日時: 2011/03/29 10:44
- 名前: 鈴蘭
榛名はもうとっくに教室に入っていた。香奈美が教室に入った直後、榛名も教室に入ったのだ。
だが虐めに参加することはせず、ただ机に座り傍観しているだけだった。周りの人々が立っているのでそれの影になって咲恵たちの様子は窺えなかったが、聞こえてくる声で何が起こっているのかは大体分かる。
(…教師っていうのも本当に馬鹿だねぇ…こんなに騒がしいのに)
ちらり、と時計を見ればまだ7時35分。ホームルームは8時からなのでまだまだ時間に余裕がある。
(まぁ職員室は1階だしね…)
職員室などの特別教室は1階にあり、この教室もとい1年の教室は全て4階にある。ちなみに2階は3年、3階は2年といった具合だ。2階ならまだしも4回からの声など当然1階に届くはずがない。
(…何だか今日はつまらない)
榛名がつまらないと感じるのには訳がある。今日に限って常備している小説を家に忘れてきてしまったのだ。昨日の夜遅くまでそれを読んでいてすっかりベットの横に忘れてきてしまった。そのことに気が付いたのは教室に入ってからだ。虐めに参加せず、小説を読もう、と思った時に自分の失態に気が付いたのだ。
(…親指探し、読みたかったなぁ……)
スクールバックをバフバフ叩いてみる。小説が出てくることを願って。
「さっすが香奈美!仕事が早いね!次やることももう分かってるっぽいし」
咲恵のやや興奮気味の声が聞こえる。
(…やっぱ無理だよなー…。……よし、行ってくるかな)
「なーに3人だけで面白そうなことしてんのー?」
この声は、と3人同時に声のするほうに振り向く。
「「「榛名!」」」
「ははっ、遅くなってごめんね?」
「いいよいいよー。あ、じゃあ腕押さえてもらえる?」
「はいはい、お安いご用ですー」
榛名は言われた通り左腕を掴む。
「ひっ…」
綾は怯え、ガタガタと震えている。
「動かないでねー?ちょ〜っと間違えると」
咲恵はそこでいったん言葉を区切り、自分の口元を綾の耳元に近づけ囁いた。
「死んじゃうから♪」
「っ!!!」
綾の眼元から涙があふれ出る。もう何をされるか分かっているようだ。
咲恵は綾のサイドテールにし、肩に付く髪をひとすくいするとそれにカッターを近づけた。綾の髪は漆黒のストレートで綺麗だと評判だった。
咲恵の赤茶の少し天然のかかった髪とは正反対の美しさだった。
自らの自慢でもあった髪がカッターによって無残にも切られた。
「…」
綾は無言だったがその眼からは大粒の涙が溢れ出ていた。