大人オリジナル小説
- Re: 終わらない戦い ( No.191 )
- 日時: 2011/06/01 18:16
- 名前: 鈴蘭
ガラッ
教室の戸が開かれる。
「皆おはよう!」
担任教師の山田が挨拶する。「おはよー」と気軽に答える生徒たち。山田は今年初めて担任を持った、新任の先生だ。歳は26。しかし童顔の為実際よりも若く見える。山田自身それを分かっていて生徒とは友達のような関係を築いている。
「あれ…束田はどうした?」
綾がいない事に気がついた山田。生徒たちなら何か知っているかも、と問う。
「何か具合悪いみたいで…」
そう答えたのは山田が来る2、3分前まで綾の髪の毛の処理をしていた香奈美。普段からまじめな生徒で知られている香奈美の言う事は説得力があった。
「そうか…」
山田は香奈美の言う事を信じた。香奈美から少し離れた席にいる榛名と、香奈美の後ろに座る鮎湖、斜め前方にいる咲恵はほくそ笑んだ。
「まぁそれは良いとして!今日は転校生がいる!まぁ知っている奴もいると思うが…入ってきていいぞー」
「……失礼」
教室に入ってきたのは戦隊物のお面をかぶり、顔がまったく見えない。髪はお面の隙間から見えていて黒色。
「「「「あっ!!!」」」」
東中出身者が一斉に声を上げる。
「隊長…」
「直くん…帰ってきたんだ」
「田端…」
「直志お帰り」
この人物は、田端 直志。東中出身。誰もお面を取ったところを見たことが無いという。誰もの記憶に残るビジュアルをしている。あだ名は「直くん」・「隊長」等など。「隊長」の由縁は東中2年の時の3班の班長が直志で、直志が「班長」を「隊長」と言い間違えたところから。
「はいはい、静かにー。田端、軽く自己紹介頼む」
山田は黒板に直志の名前を書いている。
「えー…田端直志です。何でこんな時期に転校してきたのかと言うとつい最近までチリまで冒険に行ってたからです。まぁ、宜しくお願いします」
今の発言からも分かった通り、直志は俗に言う「不思議ちゃん」だ。いや、男だから「不思議くん」なのか?
まぁそれはいいとして。直志は中学を卒業し、高校の入学式に出た次の日にはもうチリに旅立っていた。
「じゃあ田端は……谷口の隣な」
「…はい」
直志は真っすぐ通路を進む。幸人は直志を物珍しそうにジッと見つめている。
「よっ、よろしくな!」
あからさまに緊張している幸人。そんな幸人に、
「お前緊張しすぎ」
と拓斗が後ろを振り向いて話しかける。
「俺、木田拓斗な。んでこっちが谷口幸人。よろしくな、田端」
「あ、うん。よろしく」
この時皆は綾の存在を忘れていた――。
傍観者は不敵に笑う。
新たな傍観対象が出来た嬉しさからだ。
(直志…直志が帰ってきてくれた事でこのクラスはどう変わるか…楽しみだ)
傍観者は直志に望む。
すべては自己満足の為に。