大人オリジナル小説

Re: 終わらない戦い ( No.226 )
日時: 2011/06/01 18:12
名前: 鈴蘭

休み時間。
直志の周りには人がたくさん集まった。
「直志〜帰ってきたのかよ〜」
「直志くんおかえり〜」
「直くんいつ帰ってきたのー?」
直志は質問攻めにあっていた。直志はそれをすべて聞き流し、ある一点を見つめている。いや、見つめているといってもお面があるので目を見ることはできないのだが。
「あー隊長困ってるね」
「そだね」
その様子を遠くから見ていた鮎湖、咲恵、香奈美、榛名は気の毒そうに直志を見る。
 
ふいに直志が群衆を潜り抜け、咲恵らの元へとやってきた。
「…?何だろう…」
そして、咲恵の目の前でピタッと止まると、
「…かお君は………?」
と聞いたのだった。


言葉に詰まっていると、香奈美が
「薫は…この前から学校来てないんだ…」
この前というのは洵と再会した日の事。洵と再会した日から薫は学校に来なくなっていた。部屋に引きこもっているのだ。昨日、咲恵、香奈美、榛名の3人で薫の家に行き様子を確認しに行ったところ元気そうだった。
「……そう…。洵ちゃんのせい、かな…?」
「!!!」
直志は見た目はボヤッとしていて、俗にいう『不思議ちゃん』だが、頭はとても冴えているのだ。そのことを咲恵らは忘れたわけではなかったがピタリと言い当てたので驚いたのだ。
「…その反応は、肯定と受け取っても……?」
直志の眼はいつもと違い、鋭いものだった。その眼に一瞬恐怖を抱いた鮎湖だった。
「…そう。洵ちゃんと再会しちゃってね……」
答えたのは咲恵だった。咲恵の口角は吊り上っている。次の瞬間パッと顔を変えて、
「…まぁこれからも仲良くしようね。……密告者」
「密告者」というところは付け足すように、小さな声で言った。直志はそれに黙って頷いた。

密告者…。
友人同士の悪事や、悪戯の犯人などを知らせることは「告げ口」程度に認識されることが多い。告発という言葉のもつ響きでは政治に対する批判や、生活に対する不満を口にする者を、治安当局に通報することを指すことが多い。ただ、日本の若者の使うスラングの「チクる」も「密告る」と字が当てられることもある。信頼関係に基づき言った言葉がそのまま密告されることもあるため、日本では信頼を損なう行為として認識されている。(Wikipediaより一部抜粋)

直志は中学校のころから密告者として、咲恵の右腕的な位置に潜んでいるのだ。
直志の性格…誰とでも仲良くなれる性格を生かした職だ。そこに目をつけたのはもちろん咲恵。直志自身、密告を気に入っていて、互いに利益しかない。
職というと大きく考えるかもしれないがやることは単純。標的の相手から言葉を聞き出しそれを咲恵に伝えるだけ。簡単な仕事だが、友好関係の多さと信頼性が必要になってくる。それを兼ね備えているのが直志だったのだ。

咲恵のために働く姿は、まさに右腕だった―――。