大人オリジナル小説

Re: 終わらない戦い ( No.50 )
日時: 2010/07/27 18:18
名前: 鈴蘭

続き

(少し、言いすぎた、かな?…でもー…スパイ止めたくなったのは、本心だし・・・)

「そう、だったんだ」
里香が暗い声で話しかけてくる。もうその顔には表情というものが無かった。どうやら咲恵とのやり取りを聞いていたらしい。咲恵と亜子の死角となるところで。亜子が歩き出すと、咲恵が狂い始めたことも、亜子がスパイだったという話ももちろん聞いて、見ていた。
「・・・・・・見てた?」
里香は少しうつむいた。そして首を縦に、ゆっくりと振った。その様子を見て、亜子は正直に話そうと思った。
「・・・聞いてたと思うけど、ほんとはね…元々私は咲恵のスパイなの。…その、雇われてたの。咲恵に。それの一つの仕事として里香に、近づいたの」

里香は今にも泣き出しそうな顔だ。

「それで・・・仲良く・・・なったふりをしたの・・・」

里香の頬に大粒の涙がこぼれおちる。

「だから、元々私たちは仲良しなんかじゃなかった。結局、偽物の友情だったの」

「っ・・・!」

「でも今は、偽物なんかじゃない。・・・私は単純に、純粋に、里香と仲良くなりたかったからっ・・・スパイを、やめたのっ・・・」
最後のほうはもう言葉になっていなかった。大粒の涙が亜子の頬を濡らしていく。
「・・・でも・・・っ!また、裏切られるかも、しんないじゃんっ・・・!鮎ちゃんの時みたっ!」
言葉が途中で途切れたのは、亜子が里香を抱きしめたからだ。
「私はっ!鮎湖とは、違うっ・・・!裏切ったりしない・・・!」
二人の顔は涙で濡れていて、とても綺麗とは言えないほどになっていた。
「・・・・・・本当っ・・・?」
遠慮がちに里香が聞いた。

「本当・・・だよっ!」

二人の顔は涙に負けないぐらい綺麗な笑顔で満たされていた。

続く