大人オリジナル小説
- Re: 終わらない戦い ( No.80 )
- 日時: 2010/12/21 18:15
- 名前: 鈴蘭
薫は黙って洵の後をついて行った。話しかけようとしたが、洵の背中を見ると怒っているような気がした為話しかけられなかった。
「かお君」
洵が薫のほうを向く。ここは屋上に上る階段がすぐ横にある人通りの少ない場所だった。洵は階段に腰掛け、薫は立ったままだ。
「…洵ちゃん」
薫は洵に謝ろうとしていた。洵が何で怒っているのかは分からないが、自分が洵の機嫌を損ねたんだろうと考えていた。
「…あのさ、かお君」
先に口を開いたのは洵だった。薫はただ、洵の言葉を待つ。
「高塚と、仲良くしないで」
洵は俯きながらそう言った。
(今、洵チャンハ何テ言ッタ?)
「…洵ちゃん、ごめん…」
薫は訳が分からないまま、ひたすら謝った。
「…やっぱりかお君は優しいよ…」
洵はそう言うと、座っていた階段から立ち上がり薫の目の前に立った。
「かお君は優しいから…優しすぎるから…だから…だから高塚なんかとも仲良くなったんだよね」
「高塚なんか」という言葉にイラッとしたが、それどころではなかった。
「洵、ちゃん…?」
薫は初めて気がついた。
洵の「好き」が度を超えていることに。
「かお君。これからは僕のすぐ隣にいてね…?」
洵はにっこりとほほ笑みながらそう言った。薫はその笑顔が怖くてたまらなかった。
「…うん……」
ゆっくりと、ゆっくりと返事をした。
「よかったぁ…僕…僕…」
洵は嬉しそうに笑う。薫の顔は固まる。
(洵チャンハ、コンナ子ダッタッケ…?)
薫は疑問を抱いた。仲良くなり始めた、4月の頃はこんな子じゃなかった。
「かお君…?」
洵の声で我に帰る薫。
「え、あぁ…」
「戻ろっか…?」
洵が薫の手を引っ張る。
「うん、そうだね…」
洵の事を怖いと思いつつ、握られた洵の右手をぎゅっと握り返した。
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