大人オリジナル小説

Re: 終わらない戦い ( No.81 )
日時: 2010/12/21 20:57
名前: 鈴蘭

薫と洵が教室に戻ると、榛名と香奈美が話しかけてきた。
「薫、ちょっと…」
榛名が小声で話す。
「洵ちゃ〜ん!かー君ちょっと借りるねー」
香奈美の声。香奈美と榛名は前から疑問に思っていたことを聞いてみようと思って薫を呼び出した。
「っぁ…かお君…」
洵は悲しそうな顔をした。それは、まるで一人は嫌だと言っているようだった。
「すぐ終わるからさ」
薫はそれだけ言うと、榛名と香奈美に連行(?)された。

一人教室に残った洵は薫が出ていった方向を見続けていた。
「…かお君…早く帰ってきてね…?」
そんな独り言は周りの楽しげな声でかき消された。




「薫さ、洵ちゃんの事好き?」
ここは男子・女子トイレ前の廊下。薫はしゃがみ込んでいて、香奈美と榛名もそれに合わせて円を作るように座っていた。
「……何でそんな事…」
好き、と即答できないのはきっとさっきの事があったからだろうと、薫は思った。
「かー君」
「薫」
二人の声がぴったり重なった。




「「何でそんなに辛そうな顔をしているの?」」




二人は薫の顔を覗き込んだ。
薫は笑っているつもりだったので二人の言葉にとても驚いた。
「な、何言ってんの?そんな顔、してな――――」
頬に、何か温かいものが。
「…じゃあ何で泣いているの…?」
榛名の言葉で初めて泣いていることが分かった。
「あ、あれ…?」
香奈美は黙ってハンカチを渡した。
「ありがと…ははっ…何で、だろ…」
自嘲気味に薫は笑った。





そして。






「マッチ、榛名」







二人の名前を呼んだ。言葉はないが、眼で返事をしていた。













「ちょっとだけ、肩貸して」













薫は、泣いた。