大人オリジナル小説

Re: 終わらない戦い ( No.97 )
日時: 2011/04/16 16:05
名前: 鈴蘭

「…洵ちゃんて、何部だっけ…?」
場所を旧音楽室に移してからまず最初に榛名が発した言葉はそれだった。
「ん…っと…吹奏楽…だよね…?」
この榛名の質問に答えたのは香奈美だった。香奈美の言うとおり洵は吹奏楽部の中では珍しい男子生徒ということでいろいろと注目を浴びている。中学校時代も吹奏楽部に入部していてその腕前はプロ並だった。トランペットを担当しているが、独学でピアノも弾ける。
「うん…天才?」

3人で話していると、人の気配が段々近づいてくるのを香奈美がいち早く発見した。

「しっ!…誰か来る」
香奈美の言葉で薫と榛名は黙った。

足音はどうやらこちらへ近づいてきているらしい。

ちょうど香奈美たちのいるところの前には大きなグランドピアノがあるので扉を開けたぐらいでは人がいるなんて分からないが、こちら側に来てしまえば、おしまいだ。後ろは壁。右横には窓。左隣にはグランドピアノ。前にこられたら、逃げられない。

「あ、拓斗。開いてるっぽいよ」
男の声。3人は息を潜めた。
「じゃあここでサボろうぜ」

がらっ

ついに入ってきた、男2人組。
香奈美はピアノの隙間から少し顔を出して、覗いてみた。すると上履きが赤いことが分かった。函南東高等学校は学年ごとに上履きの色が異なっている。1年生は赤、2年生は青、3年生は緑、とこのように分けられている。
「あれ?」
男子生徒と香奈美の目が合った。
(やばいっ!ばれた…)

「ゆっきー。先約がいたみたい」
男子生徒にゆっきーと呼ばれた男は谷口 幸人だった。そうなるともう一人の男子生徒は木田 拓斗だった。だが香奈美たちと幸人らのクラスは同じだが特に関わりが無かったためお互い誰だか分らなかった。
「先約ぅ?じゃあ違う場所行くかー」
「そうだね」
そう言って2人は出て行った。