大人オリジナル小説

Re: Repeat ―リピート― ( No.12 )
日時: 2010/07/09 16:16
名前: 紅翠 ◆aeqBHN6isk
参照: 名前の読みはコウスイです。

*〜Story.5〜*


「おはよー」
「っはよ」

たったこれだけの挨拶でも、明るい笑顔が、その場を賑やかにさせる。
そういうことが、いろんなところで起こっていく。

それが朝の学校だった。

でも、そんな中、彩羽は誰とも挨拶をせずに、ただ廊下を歩いて行った。
もちろん、しようとしたって誰も返事をくれないのだから。
それどころか、見下すような眼で見られる。または、嘲るように笑われる。

それが、彩羽の“朝”だった。


けれども、今日は、そのいつもの朝ではなかった。

「双音さん!おはよう」

周りに誰も近寄ろうとしない彩羽に、にっこりと微笑みかけた杏那。
その後ろにいるのは静人とゆかりだ。

「…………おはよ」

だが、やはり彩羽はそっけない返事を返し、そのまま教室へと向かった。

「……はぁ、やっぱりダメなのかしら……」
「まあまあ。大丈夫。次の休み時間ぐらいには、俺達への態度、変わってるはずだから」
「そうだよ、静人君の言うとおりだよ……」

落ち込む杏那を慰める2人。

そして、静人は、ちらっとどこかを見ると、――にこりと笑った。


**


―彩羽side―


「ちょっとぉ〜、冴島さん達ぃ〜。なにやってたのよぉっ??」

気持ち悪い、甘ったるい甘宮のぶりっ子声。

それが聞こえた時、私のボーっとしていた意識がたちまち叩き起こされた。

「あいつと仲良くしてたよね。なに?もしかして双音の味方にでもなるわけ?」

人をいつも見下すような喋り方の久野。


――――ああ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

冴島達が何を考えてるのかなんて知らない。
けど、私の――。私のせいで、あの思い出したくもないことが行われるなんて、嫌ッ……


でも。

私は何もできない。
冴島達を助けるなんてこと、できない。

弱いから。

私が、弱いから。
そう、だからいじめられるんだね。
自分のこと何も言えずに、ただ流されてるだけだから、こうなるんだね。

私のこの毎日をつくっていたのは、私なんだね。


――そう思うと、急に、喉元にナニカがこみあげてきた。

瞬きを何回もする。
それでも、視界は曇っていく。

もう何も見たくなくて、下を向きながら走りだす。


――なんで逃げるの?

――怖いから、でしょう?


自分の中で、いろんな感情が左右する。
いろんな言葉を呟いたり、叫んだりして。

そんな心の中でまざまざと思い浮かぶのは、
走りだす直前に見えた、

冴島達の蹴られる姿――――。







信じてるの?
彼女達のこと。

信じるって、どういう感情?
わからないよ。

私はどうすればいいの?


ワカラナイヨ。