大人オリジナル小説

Re: Repeat ―リピート― ( No.32 )
日時: 2010/07/11 10:25
名前: 紅翠 ◆aeqBHN6isk
参照: この小説早く終わりそう。

*〜Story.12〜*


バシャリッ……

汚いバケツから汚い水が彩羽にかかった。
彩羽は一瞬でずぶ濡れになり、つやのある黒い髪から水滴がしたたる。

「えーと……水で濡らしたら、次はどうするんだったかしら。」
「アハッ! 冷華様はぁっ、お嬢様だからお掃除したことないんだもんねぇっ。
さすがだねぇっ!」

美菜がブリッ子口調で冷華を褒め称える。

「えっとね、次はモップでこすれば汚れは落ちるよ、冷華!」

凜は元気よくモップを構えた。

「それにしても、ここトイレだから静人いなくて残念よね。
力仕事は男に任せないとね〜。」

わざとらしくため息をつくゆかり。
それに対し、凜はニコッと笑う。

「大丈夫。私一応格闘技習ってるし、力はあるんだよ。」
「キャハハ、格闘技は関係ないよぉっ、凜ちゃん!
でもぉっ、凜ちゃんが強いのはホントだから安心だぉっ」
「そうね、凜は力があるわね。
じゃあこれからゴミ掃除は凜に任せましょうか。」

冷華が指を鳴らし――。

「ッ……」

モップは彩羽に襲いかかる。
押し倒され、床に頭を打つと、彩羽はゆかりに腕を踏まれた。

「本当はこんな奴、触りたくもないけどね。
でも虫ってやたらと動き回るじゃない。だから抑えとかないと!」
「うんうん、虫って気持ち悪いよねぇっ!
ゆかりちゃんえら〜い!」

美菜はそう言うと、ふと何かを考え付いたかのように、人差し指をたてた。

「濡らしたままだとカビがはえるんだよねぇっ、確か。
だからさぁ、乾かしてあげないっ?

コレで。」

ポケットから美菜が取り出した物は――――

小型のライター。

「なるほど! 炎で乾かすのか。
美菜賢ーい。じゃあ、ちょっと貸して?」

凜は美菜からライターを受け取ると、杏那に投げた。

「まだ杏那は何もしてないよね。
だからさ、コレは杏那がやりなよ。」
「え……で、でも……」

とまどう杏那。

「簡単だよ。アイツの髪、燃やすだけ。
力がなくたって、できるでしょ?」

ドン、と杏那の背中を押す。

「ほら。
アイツは何も抵抗できない。やっちゃっていいんだよ?」

悪魔の囁きが、杏那を震わせる。

「早く。
ねえ、ねえ、ねえ……」

凜が杏那の手に無理矢理握らせたライターの火をつけたその時。

「……ッ、〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

杏那は眼をギュッとつぶると――――


ライターを彩羽の髪に向かって投げ、
そのままトイレを飛び出していった。



「……弱虫ね、杏那は。
現実を見ようとしないで……」

冷華はフン、と鼻を鳴らすと、ちろちろと炎が灯るライターを叩き壊した。


(生半可な気持ちで、いじめ、やんないでほしいわ。
私がどんなこと考えて、いじめてるのか――わかってるのかしら。)


冷華の行動に固まっていた美菜達は、冷華がトイレを出て行くのを見て、慌ててその後についていった。

もちろん、彩羽のことはほうって――――。




(罪悪感?
とっくの昔に捨てた。
――そのつもりでも、消えないものね。)