大人オリジナル小説

Re: Repeat ―リピート― ( No.33 )
日時: 2010/07/11 10:57
名前: 紅翠 ◆aeqBHN6isk
参照: この小説早く終わりそう。

*〜Story.13〜*  ―冷華side―


あの人へやったこと。


ある時は紙くずを投げた。
ある時は机に噛んだ後のガムをいれた。
ある時は画鋲を椅子に仕込んでおいた。
ある時は金を奪い取った。
ある時は机と椅子を焼却炉に置いた。
ある時は水をかけた。
ある時は髪を切った。
ある時は殴った。
ある時は蹴った。
ある時は踏みつけた。
ある時は“タヒね”と言いまくった。
ある時は“消えろ”と机に書きまくった。
ある時はゴミ呼ばわりした。


自分にされたら、耐えられないことばかり。
じゃあなんでしてるの? なんで私はいじめをするの?

考えたこと、何回もある。
でも答えはでなかった。

だから、考えるのが面倒くさかったから、ずっといじめを続けた。
いじめがいけないことだなんて、そんなのわかってる。


わかってるんだよ?


でも、ちょっと、考えてみましょうか。


**


物心ついたときから、私に逆らう人など誰もいなかった。

幼稚園の時も。
小学生の時も。
中学生の時も。

先生だって何も言わない。
だって私はお金持ちだから。なんだってできるから。

逆らったらどうなるか、みんな知ってた。

それで、私を恐れて、近づく人はいなかった。

うやうやしく、“冷華様”と言ってくる奴はいた。
それでも、そんなの全然嬉しくなかった。
周りのみんなが、明るく元気に笑っているのが、とてつもなく羨ましかった。

自分がなんでもできて、トップだということ。
それは嬉しかった。
なにもできない人達を見ると、憐れむことだって何回もあった。

けど、友達がいないってことを思い出すと、私はトップなんかじゃない、ただの強がってる表面だけの女王様だと――
思うことがあった。

特に、夜寝る前、眼をつぶると、孤立している独りの私の姿が必ず浮かぶのだ。
嫌で嫌で、でもそれは絶対に消えなかった。
お金なんかで、権力なんかで消えるものではないとわかった。
友達も、お金や権力でつくれるものではないということも――。

だから、虚しさで自然に涙がでた。
私のふかふかのベッドは、いつも朝起きると濡れていた。
それを見て、また涙がでてくるのだ。


本やドラマなどで、いじめというものがあるのは知っていた。
それを行う人を、愚かな人だと思っていた。
私は、どんなに虚しくても、絶対にしないと、誓っていた――――

のに。

ある日、イライラしていた私を、さらにイラッとさせた人がいた。
前々から“嫌な奴”と感じていた人だ。

それで、つい、言ってしまった。
“ウザい、タヒんで。”
その言葉を言うと同時に、シャーペンを刺した。
痛がる相手を見て、


――――どこかに快感をおぼえた。


――埋めてくれる。私に唯一足りないモノ……その穴を、埋めてくれる。
――なら、アンナモノはいらない。いらない、いらない。

――だってどうせ手に入らないんだもの。


諦めていた私に、天使が舞い降りたように感じた。
もっとも、実際に降りてきたのは、悪魔だったけれど――。


それから、私は、あの誓いもプライドもなにもかもを捨て、いじめをするようになった。


**


辛いの? 悲しいの? 苦しいの?
そうでしょうね。
でもゴメンなさい。

私、いじめをやめることは、できないわ。
だから、馬鹿な私を、お願い、許して――――。


そして、またやるの。




「ウザいんだよ!! タヒね!!」