大人オリジナル小説
- Re: Repeat ―リピート― ( No.35 )
- 日時: 2010/07/11 11:40
- 名前: 紅翠 ◆aeqBHN6isk
- 参照: 終わっちゃうよオイオイ
*〜Story.15〜*
この日の空は、まっさらで、雲一つない美しい青だった。
風が涼しげにふく。
ぎ、ぎぎぃい――……
すると、空と風を一番楽しめる場所――屋上の扉がきしんだ音をたてて開いた。
入ってきたのは、長い黒髪をなびかせる少女。
吸い込まれそうな藍色の瞳は、どこを見ているのだろうか。
少女はどこか楽しげな表情で、フェンスに近付く。
フェンスに手をかけ――
ようとしたが、動きが止まり、数秒自分の手を見ると、後ろを振り返った。
すうーーっ、と深呼吸をし、空を見上げる少女。
少し寂しげな色が瞳にやどる。
でもそれも一瞬のことで、少女はまたフェンスに手をかけた。
するする、と登っていき、反対側にゆっくりと降りる。
今にも落ちそうな不安定な状態で、少女は笑みを浮かべると、
つかんでいたフェンスを離し――――
「これで、終わり。Fineだよ。」
空に、身を投げた。
ずっと紡がれていた曲は――――、
静かに、終わりを告げた。
**
タタタタ、と階段を上る音。
勢いよく開かれた屋上の扉。
そして、少女は、力が全て抜けたかのように、座り込んだ。
「手遅れ――……」
下でけたたましいサイレンと悲鳴の声が聞こえてくる。
しかし、その騒音も、少女――杏那には聞こえず、ただただ、涙を流していた。
――なぜなにもできなかった。
――なぜ助けられなかった。
――なぜあの時、あんなことをしてしまったの?
涙と共にあふれでてくる後悔の念。
けれど、もうなにも、戻ることは無かった。
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