大人オリジナル小説

Re: Repeat ―リピート― ( No.5 )
日時: 2010/07/08 16:19
名前: 紅翠 ◆aeqBHN6isk
参照: 名前の読みはコウスイです。

*〜Story.3〜*  ―彩羽side―

「双音さん」


まだ、じん、と痛みが残る腕を、おさえながら帰っていたその時。

後ろから、よく透る声が聞こえた。
……少なくとも宝洞達ではない。

誰だろう、と、ゆっくりと後ろに振り向く。
もしかしたら、私の眼はうつろだったかもしれない。

ぼんやりとした視界に映ったのは、女子2人と男子1人。
特に顔に見覚えはないが、クラスメートだったかもしれない。
よく覚えていない。
そんなこと覚える暇もないほど、私の脳は、いつも嫌な感情が渦巻いていたから。

……ああ、けど名字を知ってたんだからクラスメートかな。
でもまあ、誰であろうと、なぜ私に話しかけるのだろう。
クラスメートなら、私に関わるとどうなるか、わかっているくせに――……。


ずっと黙っている私を見て、顔を見合わせる3人。

――なに、なんなの。
早くしてよ。
私から言うことなんてなにもないの。
用があるならさっさと言いなさいよ。


次第に苛立ちがふつふつと湧いてくる。
それでも向こうはなにも言おうとしない。

もういい……。

別に家でなら幸せに過ごせるわけでもないし、急いでいるわけでもない。
けど、この人たちに使う時間もない。

そう思い、踵を返すと、やっと黙りこくっていた口が開いたようだ。

「ま、待って。私……冴島 杏那。
双音さんに、話したいことあって。」

冴島?……ああ、そういえばクラス委員がそんな名前だった気がする。

「なに、冴島さん。話したいことって。」

私に、標的に関わっては駄目と、わかってるくせに。
何を言うつもりなの。

――――貴方達も、いじめしようっていうの?

冴島の言葉が発せられる数秒の間に、嫌な想像が頭をよぎる。
それでも、「別にもういい」そんな感情もあったことは確か。
もう何があったって、人生が大きく変わるわけでもないしね。

いじめが増えるだけでしょ?たった、それだけのこと。
1個だろうが2個だろうが変わんないわよ。この生活はね。


「ほら、杏ちゃん……早く言いなよ……」
「俺が代わりに言おうか?」

下を向く冴島に小さい声で呼び掛ける2人。

ホント、早くしてほしいわ。



きっと気のせいでしょうね。
2人が笑っていたように感じたのは。