大人オリジナル小説

Re: ピアニストへの復讐 ( No.14 )
日時: 2011/02/25 16:21
名前: 真由子 ◆NCebuCi9WY

【上達】

奏歌は歯を食いしばる。
指先は延々とピアノを叩いてるせいか少し赤くなっている。
でもそんなものは気にならなかった。
奏歌は田園を弾き続けた。
何時間弾き続けているのだろう。
窓の向こう側は真っ暗だった。
「奏歌〜、飯〜!」
そう兄に呼ばれるまで奏歌は弾き続けた。
制服姿の奏歌は、服を着替える。
黒のパーカー姿の奏歌は1階に向かう。
カレーのいい臭いが鼻を擽る。
奏歌はいつもの奏歌だ。
「奏歌、お前ピアノ上達してないか?」
兄の慶介にそう言われると、奏歌は蔓延の笑みを浮かべた。
「へへっ、そう?」
そう可愛こぶって椅子に座る。
テーブルには4皿のカレーライスとサラダが置いてある。
奏歌は「いただきます」と声を上げカレーライスを頬張った。
「しかし、慶介の言うとおり、奏歌ちゃん本当に上手くなったわよねぇ。」
祖母のさなえが奏歌を褒めた。
両親を亡くしたのは12年前―――・・・。
4歳の夏だった。
奏歌と慶介は父親の両親に育てられる事になった。
さなえは慶介は慶介と呼び捨てなのに、奏歌だけにはちゃん付けで呼ぶ。
こんなに穏やかな家族の元に生まれて本当によかった。
気付くとカレーライスはすっかりお腹の中だった。
ごちそうさまと言って、奏歌は台所を出る。
先に戻っていた慶介の部屋からギターの音が聞こえる。
奏歌は部屋に入るとベットに身を投げた。
そして、スヤスヤと寝息を立てて眠ってしまった。