大人オリジナル小説

Re: コスモス(感想受け付けております) ( No.14 )
日時: 2011/04/07 17:27
名前: カノン
参照: http://ameblo.jp/kanon-burogu/

第4章――感情

優衣は傷ついていた。
“沙希は唯一無二の友達、ううん、親友だと思う”
優衣はこんなことを言われる前に気がついていた。
予想していた答えだったが、それを人に言われるのとは苦しみのレベルが違う。

それでも、と優衣は思った。
“優衣のことは嫌いじゃない”と真純が言っていたではないか。
落ち着いて考えてみれば、直接真純が優衣を傷つけたわけではない。
だったら…。
だったら、この悔しさと悲しさはどこからくるのだろう。


相変わらず、真純と沙希は仲がいい。
休み時間に沙希の冗談に真純が笑っている光景を目にした。
1ヶ月前までは沙希の代わりに優衣がいた。
なぜか、胸がちくりと痛む。
沙希の描いた絵を真純がほめると、沙希の洋服を真純が『かわいい』と言うと、
難しい計算を沙希が解くと、沙希が8段の跳び箱を軽々と飛ぶと、優衣の胸はちくりと痛んだ。
これは今までになかった気持ちだ。

優衣はいつものように1人で帰った。
そして自室にこもるとベッドの上に座った。
ふと、机の上にあった写真が目に入った。
優衣と、真純が写っている写真。
後ろのほうにはコスモスの花畑が写っている。
写真の端にピンクのペンで“友情3周年”と書いてあった。
あんなものは見たくない。
優衣は写真を伏せた。
別に、真純のことが嫌いではない。
むしろ好きだ。
今でも友達だと思っていたい。
でも、真純は沙希と一緒だ。
優衣の入る余地などない。
政権交代、といったところだろうか。
優衣は『政権交代』という言葉で笑った、いや、無理に笑おうとしただけだった。
昨日の“唯一無二の…”という言葉を思い出し、泣きそうになるのをこらえていた。
真純のことが嫌いなわけではないのに、どうして苦しいんだろう。

『あ…!』
優衣は思わず声を出した。

沙希だ。
沙希のせいだ。
優衣の頭には、『沙希』という2文字が瞬時に浮かんだ。
――私の居場所は、沙希にとられた。
優衣は涙がこぼれそうになったが、同時に沙希への違う感情も湧き出ていた。
怒り。
恨み。
復讐心。