大人オリジナル小説

コスモス ( No.2 )
日時: 2011/04/12 16:14
名前: カノン
参照: http://ameblo.jp/kanon-burogu/

第2章――広がる溝

沙希は完璧だった。
勉強・スポーツ・容姿どれをとっても非の打ちどころがない。
そのことを自慢しない謙虚な性格と相まって、たちまちクラスの人気者になった。
頭もいいので先生うけもいい。
沙希にはたくさんの友達ができた。
なかでも隣の席の真純とはすぐにうちとけ、登下校や休み時間・放課後も一緒にいた。
ただ、そのために寂しい思いをしている人がいることは誰も気がつかなかった。

『真純、一緒に帰ろ。』
優衣が真純に声をかけた。
『ごめんね。沙希と一緒に帰るんだ…。』
やっぱり。
予想していた返事ではあるが、いざ言われてみるとやっぱりへこむ。
最近、真純は優衣とあまり一緒にいない。
クラスの人たちも、そのことにはうすうす気づいている。

でも。
優衣は思った。
毎日声をかければ、前のような関係に戻れるのではないか。
私たちは友達でなくなったわけではない。
ただ、距離が離れていってしまっただけだ。
声をかけていれば、真純だってこっちを向くはず。

次の日の帰りの会の時間に、優衣は昨日の作戦を決行した。
――断られても、明日また誘えばいい。
そう思うことによって、優衣は自分自身の心を落ち着かせる。
『ねえ真純、今日一緒に帰れる…?』
『ごめん、今日委員会あるから…。』
残念だけど、それなら仕方がない。

優衣が静かな住宅街を一人で歩いていると、聞き覚えのある声がした。
声の持ち主は右の角を曲がっていった。
すかさず優衣はあとをつける。
なんだか聴いてはいけないことを話している気がして、優衣は電信柱に隠れた。
声のするほうを目で追う。
真純がいた。
そして、その隣には沙希がいた。
2人は楽しそうに話している。
時々笑い声を上げて、立ち止まったり、また歩き出したり。

突然、真純が切り出した。
『あのさ、優衣のことなんだけど…。』