大人オリジナル小説
- Re: コスモス(感想頂けると喜びます♪) ( No.24 )
- 日時: 2011/07/20 10:55
- 名前: カノン
- 参照: http://ameblo.jp/kanon-burogu/
第7章――疑惑
沙希の上履きがなくなった――。
噂好きの女子グループから、物静かな優等生タイプの男子までに
この話は行き渡っていた。
『田辺さんの上履きがなくなりました。1時限の学級活動はクラス全員で上履きを探します。』
学級委員と先生の一声で、1時間目に上履きを探すことになった。
ほとんどの生徒は授業がつぶれると内心嬉しさでいっぱいだろう。
――ただ一人、大森優衣を除いて。
『授業がつぶれたのはいいけど、上履き探しって何だよ。』
『ぜってー女子が隠したんだろな。』
『北島とか三澤とかアヤシイよなぁ…。』
男子の会話に自分の名前が出てこないことに少しほっとした優衣は考えた。
これからどうすればいいのだろう。
優衣は二つの方法を考えた。
1つは池の中から上履きを取ってくること。
何か言われたり聞かれたりすることは間違いないが、そこは適当にごまかしておけば大丈夫だろう。
もうひとつは今のように探しているフリをすること。
一番簡単で、安全な方法…と思われる。
優衣は後者を選択した。
だったら言い訳を考えておかなければ…。
優衣がそう考えていると、視界の端に沙希と真純の姿が入った。
真純が沙希のことを心配しているのは表情やしぐさで分かるが、何を話しているのかは聞こえない。
いや、聞きたくない。
私がもし、物を隠されたら真純はあんなふうに自分の事を心配してくれるのだろうか。
もう真純は振り向いてくれないと分かっていても考えてしまう。
『校庭のほうも探してきなさい。』
先生の一声で、みんな校庭へ駆け出していった。
優衣も慌ててついて行く。
純粋な善意で探している人もいた。
グラウンド、野菜の畑、1年生が育てているミニトマトの鉢――。
そして池も。
『あ、あったよ!』
一人の女子、牧原彩香が声を上げた。
クラスメイトが集まってくる――池に。
池に沈んでいる上履きを、男子が魚採り用の網で揚げた。
目に涙を浮かべた沙希と、同情と困惑の顔をしたクラスメイトの前で、彩香は笑みを浮かべて言った。
『この上履きって、多分女子がやったんだと思うんだけど。』
みんな彩香の話を聞いている。
『橋本さんがやったんじゃない?』