大人オリジナル小説

Re: 生きる希望を下さい 【30話 更新】 ( No.118 )
日時: 2013/04/14 21:00
名前: 華世

♯31 薬物依存症の罪



 薬物は記憶障害を引き起こす事がある。
 それは医者の娘として、常識範囲内であった。
 私はかろうじて止める事ができたが、由麻は完全に薬物依存症に陥ってしまったらしい。

 由麻たちは1時間目が終わると同時に、教室を出て行った。
 何故なのかは知る由もないが、私はそれを聞いて安心した。
 昼休みになった今でも、今朝あった事を女子たちが噂していた。

「ねえ、今朝の宮坂さんさぁ、何かおかしくなかった?」
「だよねー。うちも変だと思ったー!」
 そんなやり取りを私は本を読みながら聞いていた。
 噂話が行き交う中で、本の内容は全く頭に入らない。
「あたしさぁー、見ちゃったんだよねぇー」
「何々ー? 教えてよー」
 女子たちの会話は次々と進んでいく。まるで止まる事を知らない。
 私は本を読むのを止め、彼女たちの会話を聞く事にした。
「実はね、昨日塾の帰りにね……」
 話を切り出した女子は顔を顰め、他の二人を近くに集めた。
 二人も興味津々の表情で彼女が口を開くのを待っている。
 盗み聞きは少し気が引けたが、私もこっそり耳を傾けた。
 そして彼女が口を開いた。


「宮坂さんたちが、ほかの学校の中学生にに暴力を振るってお金を盗んでいったの!」


 薬物で気が狂っていたのは分かっていたが、ここまでするとは思わなかった。
 これを繰り返していたとしたら、後に捕まるに違いない。
 半分は助けたかったという気持ちだが、もう半分は捕まってしまえばいい。
 そんな事を私は本を読むふりをして考えていた。