大人オリジナル小説
- Re: 生きる希望を下さい 【43話 久々更新】 ( No.144 )
- 日時: 2013/07/01 19:27
- 名前: 華世
♯43 花の如く
自分の子供を抱くかのように、頂いたフラワーアレンジを大事に抱えて紗雪のいる病室へと向かう。
「元気にしてるかなぁ……」
廊下に微かに漂う薬品の匂いで、私の心は不安へと追いやられた。
かなり悪化していて話す事すら儘ならないとしたら。眠ったまま目を覚まさなかったとしたら。
そんな負の考えが頭の中をぐるぐると反芻する。
だが、胸に抱えた鮮やかなフラワーアレンジを一瞥してその考えを即座に否定した。
そんなことはない、紗雪はこの前まで元気だったのだから。
大きな希望を託して、私は病室の扉を開いた。
一番初めに私の目に映ったのは、全身を管で繋がれて痩せ衰えた紗雪の姿だった。
「千、聖……来てくれたのね」
少々苦しそうに言葉を区切りながらも紗雪は微笑む。
窓際には白髪交じりの男性医師。首から下がるプレートには“相澤”の文字。
私は相澤先生に軽く会釈をして紗雪の元へ向かう。
「久しぶりね、お見舞いにフラワーアレンジを持ってきたの。先ほど花屋の女性から頂いたのよ」
そして目の前に鮮やかなガーベラを差し出した。
紗雪はわぁ、と感嘆の声を上げて恍惚の笑みを浮かべている。
相澤先生はそんな紗雪を見て嬉しそうに目を細めた。
「ありがとう、千聖。来てくれた上にこんなに綺麗な花まで……」
私はそんな彼女を見て、またもや不謹慎にも負の考えが浮かび、僅かに涙が滲んだ。
次第に永遠の別れが近づいている気がして。
その命が花の如く、儚く散ってしまう気がして。
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