大人オリジナル小説

Re: 生きる希望を下さい 【参照2000記念イラスト】 ( No.159 )
日時: 2013/07/19 17:10
名前: 華世

♯45 大切な日々を  玲視点



 遠くに小鳥のさえずりを聞きながら、わたしはふと考えた。
「もう2年生も終わりだなぁ……」

 あまり目立った事がないわたしは、自分を変えたい一身で初めて学級委員という立場に立った。
 自分の為と思っていたこの仕事も、気づいたらクラスを良くする事だけしか頭になかった。
 でも、理想とは裏腹に現実は甘くない訳で。
 宮坂さんたちがクラスを支配していき、頂点に立った彼女は絶対女王。
 先生や生徒たちの間でも悪い事で有名だった。

 彼女の言葉や行動に従わなければ、あんな事にはならなかったかもしれない。
 わたしは今でも悔やんでいる。
 今更思い返しても仕方がない事だけど、学級委員としても責任はあったはず。

「わたし、学級委員失格だね」

 ぽつりと呟いて、足元で寝転がっていたペットのモコをそっと抱き上げた。
 トイプードルにしてはさらに小柄なモコは、わたしの一番の友達でもある。
 不思議な事に、モコにだけは何でも打ち明けられる。他の人から見たら滑稽に思われるかもしれないけれど。
「最後まで学級委員としての役割を果たせなかった……」
 わたしの言葉が通じたのか、モコは小さく鳴いた。
 何と言っているのかは分からないが、そのつぶらな瞳を見ているうちに少しだけ元気が出てきた。
 残りの日々を、大切に過ごそう――――

「さてと……お散歩、行こうか」
 モコに首輪をつけて、わたしは立ち上がる。
 お散歩が嬉しいのか、先ほどよりも明るく鳴いた。

 最後まで皆が笑顔で過ごせますように。