大人オリジナル小説

Re: 生きる希望を下さい ( No.17 )
日時: 2013/07/26 17:40
名前: 華世

♯3 生きているという事



 不意に鉛筆立てに手を伸ばす。手に取ったのは、カッター。
 カチカチと音を立てて刃が出る。
 それは自殺なんかの為じゃない。ストレス発散。

 私は手首に鋭利な刃を当てる。
 切るのは少し怖かったが、死ぬよりは全然怖くない。
 そっと押し当て、カッターを一気に横に引く。
「……っ!」
 私の色白な手首に一本の紅い線が滲み出た。同時に僅かな快感を覚える。

 手首の痛みより、心の痛みの方が何倍も大きかった。
 受験に落ちてから受けてきた母親の暴力、罵声。
 何もかもが忘れられる気がした。
 前に切ったリストカットの傷は今も残っている。
 その傷は、私の心の傷でもあった。


「自由になりたい」
 悲しくも無いのに溢れてくる涙が止まらない。
 見上げる夕空が滲んで見えた。太陽が瞳の奥で目映く輝いている。

 その時、私は感動した。
「綺麗……」
 生きているのはこんなに素晴らしい事なんだ。
 生きているのは感情があるという事なんだ。

 今まで思えなかった事が、初めて思えた。