大人オリジナル小説

Re: 生きる希望を下さい ( No.25 )
日時: 2013/07/26 17:51
名前: 華世

♯6 操り人形は束縛されて



 今日は何故こんなに運が悪いんだ、と思えるくらい嫌いな教科ばかりだった。
 次の時間は進路学習。将来の夢や就職先を考える授業。


「席に着きなさい」
 銀縁眼鏡にサイド結びの女教師が入ってきた。
 教師より秘書の方が似合っていると言っても、過言ではないだろう。
「今日は進路学習よ。2年生になったのだから、少しは考えないとね」
 そう言って、進路学習用のプリントを配り始めた。
 プリントをもらった皆は、すらすらと質問に答えている。

 私はプリントを手にしたまま、呆然としていた。
 “貴方の夢は何ですか”
 この文字に目が釘付けになっていたのだ。
「私の夢……」
 自分しか分からない質問を、自分の心に問いかける。
 シャーペンを持った手が動かない。自分の夢が分からない。
 今までずっと、束縛されて生きてきた。
 私の辿る道は全て、親が作り上げてきた道。自由というものを知らない。


 私は震える手を必死に抑え、プリントにに乱暴な字で、

 “私の夢はありません”

 その一言だけを書いた。