大人オリジナル小説

Re: 生きる希望を下さい ( No.26 )
日時: 2013/07/26 17:52
名前: 華世

♯7 私の心に悲しみを



 憂鬱な時間がようやく終わった。
 私は部活に所属していないので、授業が終わったらすぐに帰る。
 勿論、一人で帰るのだ。

 学校から歩いて20分くらいの所に自宅がある。
 家にいても虐待されるだけなので、私は近くの公園に少し寄り道をしようと考えた。
「今日もつまらなかったな……」
 溜息を吐いて呟いてみる。溜息を吐くから幸せになれないんだと思うけれど、もう習慣になってしまった。


 俯きながら右を曲がる。
 そこでは、フラワーショップの女性が花を配っていた。
 花を貰わないですぐに帰ろうと思った時だった。
「はい、カーネーション。母の日のサービスよ」
 そう言って、女性が笑顔でカーネーションをくれた。
 断るのは気が引けるので、礼を言って急いで立ち去った。


 今日は母の日だった事をすっかり忘れていた。
 母の日は私にとって無縁のものだと思っていたから。
 貰ったのは、一輪の赤いカーネーション。
 それは私の一番嫌いな花だった。
「カーネーション、か」
 その花を見て、私はまた溜息を吐いた。

 花言葉は“私の心に悲しみを”
 まさに今の自分に合っていると思った。

 茜色の空の下で、赤いカーネーションが映えていた。