大人オリジナル小説

Re: 生きる希望を下さい ( No.53 )
日時: 2013/03/26 13:54
名前: 華世

♯12 太陽と月の花



 階段を急いで駆け上がる私たち。
 他の者から見れば、恐らく遅刻者同然だろう。
 正当に言えば遅刻者そのものなのだが。


 ガラッ


 派手な音が、静まり返っていた教室を一層冷たい空気にさせる。
「お、遅れてすみません……!」
 生徒たちは特に興味を示す様子もなく、私たちを一瞥して前を向いた。
 しかし、教師は紗雪が来た事に驚いたようで、しばらく黙っていたが、「早く座りなさい」と後から冷静に促した。


 とにかく私たちは浮いていた。
 不登校だった紗雪に、クラスに馴染めない私。
 クラスメイトたちの中に、ぽつんと二人取り残された。
 でも、たとえ浮いていたとしても、自分独自の生き方で生きていく。
 それが紗雪の考えだった。

 紗雪はどこか、芯のある強い少女だと思う。
 明るくて清楚な反面、思ったことはしっかり言える性格だ。
 そんな紗雪が羨ましかった。

 自分と全く正反対の性格。
 私は、何時の日か紗雪が自分のもとを離れ、どこかへ行ってしまうのではないかと不安になった。

 私を見捨てないだろうか。
 私のことを嫌いにならないだろうか。

 ずっと親友でいてくれるだろうか―――


 願わくば信じたい。
 私を“大切な親友”と思ってくれているという事を。