大人オリジナル小説
- Re: 生きる希望を下さい ( No.58 )
- 日時: 2013/03/26 13:57
- 名前: 華世
♯13 君とあたし、違う道 紗雪視点
席についた後、ちらりと横目で千聖を見た。
偶然にも目が合い、あたしは少しだけ笑って見せる。
すると、滅多に笑わない千聖が微笑み返してくれたのだ。
あたしは嬉しくなった。
そして、初めて“親友っていいな”と思えた。
あたしは小学校1年生の時、施設に預けられた。
理由は一つ。
母親があたしを育てることに疲れたから。
父親は4歳のときに離婚して2人暮らしをしていた。
家族というものを知らないあたしは幸せな家庭をいつからか望んでいたのかもしれない。
ある日、母親は嘘を吐いた。
『紗雪、ちょっとお出かけしようか……』
何も知らない幼いあたしは、黙って頷く。
それから何分か歩いた所に目的地が在ったのだ。
目的地とは勿論、“施設”だ。
『すぐに戻るから良い子にしてるんだよ』
それだけ告げて、母親はあたしを捨てた。
何時間、何日、何週間待っても戻ってくることはなかった。
自分を“捨てられた子”と思うようになったのは、その時からだった。
前の生活と比べると、今のほうが遥かに幸せだ。
“親友”と言う大切な宝物ができたから。
歩んできた道はそれぞれ違うけれど、千聖とは何処か似ているのかもしれない。
これからもずっと“永遠の絆”って事、信じてる。
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