大人オリジナル小説

Re: 生きる希望を下さい ( No.60 )
日時: 2013/08/09 10:42
名前: 華世

♯14 堕ちていく自分



 紗雪といる時が、一番楽しいと思う。
 家に帰れば絶えない暴力、虐待。
 学校だって本当は嫌いだけど、紗雪がいるから頑張れる。

“ありがとう”

 言いたいのは、ただその一言だけ。


 いつもと変わらぬ休み時間。
 教室には読書をする者、はしゃぎ回る者、友達と話している者など、様々な光景が目に映る。
 そんな中――

「神崎ーちょっと来てくれない?」

 ――刹那、私の体が凍りついた。
 恐る恐る振り返ってみると、そこには教師たちの中で噂になっている不良のリーダー、宮坂由麻が立っていたのだ。
「何の用ですか」
 私と同じく、紗雪も少し引き下がった。
「あぁ、用があるのは神崎一人だから」
 そして腕を強く掴まれ、引っ張られた。
 連れて行かれる私に紗雪は何か言いたげだったが、 由麻の鋭い視線には勝てなかった。

「何で私だけ……?」
 床に押し倒された私は由麻に問う。
 すると、由麻はそれを待っていたかのように答えた。
「森川来ると邪魔だからね。貴方もはっきり言ってうざいの」
 不適な笑みを浮かべながら淡々と話す由麻。
「だからね、じわじわと恐怖を味わってもらうわ……」

 由麻の手には、小さな小瓶と注射が握られていた。
 悪寒が走る。逃げられない。
 次の瞬間、由麻の口から思いもよらぬ言葉が吐き出された。

「すぐに楽にしてあげるからね――」