大人オリジナル小説

Re: 生きる希望を下さい ( No.92 )
日時: 2013/04/04 11:34
名前: 華世

#18 裏切りと別れ



 教室に戻ると、紗雪が一目散に私の方へ駆け寄ってきた。
「千聖! 何もされてないよね!?」
 紗雪はそう言って、私の手を触ろうとする。
 その手を私は思いっきり叩いた。

 バシッ……

 痛々しい音が響き渡り、教室は水を打ったように静まり返った。
「触らないで!」
 怒鳴る私に、紗雪は驚きの表情を見せた。
「どうして……?」
 その時、後ろから由麻たちがやってきた。
「教えてほしいのね?」
「……はい」
 由麻の鋭い瞳から目を背けることもなく、紗雪は静かに頷く。
 沈黙を破るように、由麻が笑った。
「あははは……! 何よ、簡単な事じゃない」
 紗雪の前に仁王立ちし、しゃがみ込んだ彼女を見下ろした。
 そして、吐き捨てるかのような淡々とした口調でとどめを刺した。


「千聖はあたしらの仲間になったのよ」

 
 何かが壊れる音がした。
 きっと、私の心のどこかで“後悔”という感情が高まったんだ。
 でももう遅い。
 後戻りは、できない。

「とにかく、もう千聖に近寄らないで頂戴ね」
 由麻たちは微笑みながら教室を出て行った。
 周囲の視線が、一気に私に集まる。
 私は堪らなくなって、由麻の後を追った。

 さよなら、紗雪。