大人オリジナル小説

Re: 生きる希望を下さい ( No.95 )
日時: 2013/03/26 14:26
名前: 華世

#19 心の中の雨  紗雪視点



 雨は一向に降り止まない。
 それどころか、先ほどよりも雨足が強くなったように感じられる。
 何かに例えるなら、まるで絶望に満ちた自分の心の中のようだ。


 一体、短時間で何があったのだろうか。
 あんなにも大人しかった千聖を別人に変えてしまったのだから。
「どうして……」
 呆然としているあたしの頭には、只々、疑問符が浮かび上がるばかり。
 だが、千聖に何があったのかなど、今は知る術もない。
 あたしは感情に身を任せて、教室を飛び出した。


 全速力で廊下を駆け抜ける。
 あふれる涙を必死にこらえながら駆け抜ける。
 廊下にいた生徒たちの視線が、自分に向けられているのを実感する。
 だが、足を止めることはない。ひたすら走り続ける。

 そして、辿り着いた。

 誰もいないことを確認して、屋上の扉を開けた。
 雨風に吹かれながら、孤独感に浸る。
 今頬を伝っている雫が、雨なのか涙なのかも分からず。
「千聖……」
 千聖の名を呟いて、壁に持たれる。
 また泣いて、嘆いての繰り返し。
 あふれる涙は止まらない。


 届かないのは分かっている。
 だけどこれだけは伝えたい。


 千聖に見捨てられても、あたしは千聖を見捨てないという事。