大人オリジナル小説

Re: 中間地点の裏取引 ( No.4 )
日時: 2011/05/12 21:27
名前: 玖龍 ◆7iyjK8Ih4Y

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「ね、今日のアイツ、面白かったよ」


笑いながら私に話しかける鈴香に、私も嬉しそうに相槌を打った。
虐め報告。日課だ。
罪悪感を全く感じないわけではない。
ここで聞いている私に罪はかぶらない。鈴香はそんな人間ではない。……と、信じている。
私には、無理だから。
虐めるのが怖いから、こうして聞いて、笑ってる。
同罪だ。


「蹴ったら泣き出しちゃってさぁ、その姿がもう面白くって!」


五月にもなったというのに、この寒さ。
ボツボツとかさに当たる雨水は、私の足元をつうんとぬらした。


「何アイツ、泣いたんか」


感情のこもらない笑い方。
私は、鈴香が好きだ。好きだけど、時々怖くなる。
裏切られたらどうしよう。
あっちのグループにばれたらどうしよう。


「あ、そうそう。春季がさぁ、手紙送ってきたんだよねぇ」


春季ちゃんとは、もともと同じグループだった鈴香。
同じグループだったのに、春季が裏切ったという。
原因は、今虐められている子。アキラちゃん。
鈴香のグループでさんざん悪口を言ったくせに、春季が急にアキラちゃんと仲良くなったそうだ。
それでいて、今、裏切った。

私は強くなった雨音ごしに、鈴香の話を聞いていた。


「何か、『言いたいことあるならいって。あと、手紙返してね』だって。言いたいことは、『死ね消えろ』だって」


死ね消えろ。
そうだね、と、私は笑う。


「しかもさぁ、同じグループの人に手紙渡してって言うんだよ?強気なくせに弱いし」


その言葉が、私に向けられているようで怖かった。



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