大人オリジナル小説
- Re: 死に方を知らない君へ。 ( No.112 )
- 日時: 2014/04/29 22:02
- 名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU
私は引っ込み思案で人見知り故に、誰かに声を掛ける事もままならない。その為昔から友達が少なく、彼女に出会う前はどこに行っても孤立していた。
初めて彼女と出会って、私の人生はようやく動き出した……と表現しても過言ではない。
常におどおどしている私を、彼女は嫌な顔1つせず受け容れてくれる。
私にとって彼女は、女神のような存在で。自分でも気が付かない内に、依存するようになってしまっていた。
それが彼女には大きな負担となっていたのだろう。彼女は呆気なく私の元を離れ、自由を求めて別のクループへ飛び込んでいった。
残された私は真の意味で一人ぼっちになってしまい、悲しくて淋しくて何度も泣いた。しかしどんなに後悔しても彼女が戻って来る事はなく、私は友達と仲良さげに歩く彼女の姿を、ただ見ている事しか出来なかった。
……たったそれだけの、つまらない話。
今更思い返してもどうにかなる訳ではないが、私は時々彼女の事を考える。
もう、元の関係に戻りたいとは思わない。彼女が誰かに束縛されず、幸せに過ごしていればそれで良い。
私は残りの階段を一気に駆け下りようとして、止めた。
わざわざ私がそうしたのは、向こう岸に知らない少女の姿が見えたからだ。
少女は向こう岸の階段を上った先で、古い木製の手すりにもたれかかっている。ここからではよく見えないが、どうやら何か作業をしている途中らしい。
ただ何となくぼんやり少女の姿を見つめていると、ふと目が合って私は慌てた。
すぐに少女から視線をそらし、何事も無かったかのように来た道を戻っていく。
そんな時、私は大声で引き止められた。
「待って!」
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