大人オリジナル小説

Re: 死に方を知らない君へ。 ( No.20 )
日時: 2014/02/09 19:14
名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU

第一章「理想と現実」

 ふと立ち止まって見上げた空には、どこか切なさが感じられた。
 空は吸い込まれそうなほど青く、雲は綿菓子のようにふわふわと広がっている。雲の隙間から溢れるのは、眩しい太陽の光。
 まるで絵に描いたかのような、とても綺麗な空だ。

「綺麗だな……」
 ポツリと呟き、私はまた歩き出す。学校から、家までの長い帰り道を。

「……はぁ」
 しばらく歩いた所で、私は大きな溜め息をついた。帰り道は、いつも憂鬱だ。
――本当は、家になんて帰りたくない。
 私がそう思う理由は、お母さんにあった。
 お母さんはとても厳しくて、些細な事でもすぐ怒る人だ。だから褒められる事よりも、怒られる事の方が圧倒的に多い。
 多分、家に帰ってもまた怒られてしまうのだろう。

 "あんたはアイツにそっくり。見てるだけでイライラするのよ"
 "こんな事もできないなんて、あんたって本当に役立たずだわ!"
 "あんたのせいで、私死ぬわ。あんたが怒らせるから、血圧上がるのよ!"

 お母さんは怒ると、いつも私にそんな言葉を投げつける。
 そして、容赦ない暴力を私に振るうのだ。
 "私は、お母さんの望むような良い子じゃない"
 その事を誰よりも分かっていたからこそ、余計にお母さんの言葉が突き刺さった。