大人オリジナル小説

Re: 死に方を知らない君へ。  ( No.34 )
日時: 2014/02/06 20:38
名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU

 私がどんなに時間よ止まれと願っても、時計の針を止める事すら出来ない。
――そうして、当たり前のようにまた朝がやって来る。

 夢の中ですら現実を突きつけられ、気持ちのいい目覚めどころでは無かった。
 しかしそれもいつもの事。幸せな夢なんて全然見た事が無いし、何より私は朝が嫌いだ。
 まだ寝ていたいと駄々を捏ねる体を起こして、ちゃんと開いていない目をこする。冷たかったベッドは私の体温で温まり、心地良い気分だったがその余韻に浸っている暇は無い。
 うっかり二度寝して、朝寝坊なんてしてしまったら……。その先の答えは、考えなくても分かる。
 考えるよりも先に、体が答えてしまうからだ。
……その証拠にさっきから、体の震えが止まらない。

 震える体で着替えを済ませて、リビングに向かう。
 リビングに着いた途端、お母さんが鬼のような形相で私を睨みつけた。
「遅いわよ! さっさと朝御飯食べちゃいなさい」
 その怒鳴り声に気圧されて、私は急いで席に着く。
 テーブルの上に用意された料理は、カレーライス。昨日の残りだった。
 お母さんも同じものを食べている。とにかく、急いで食べなければ……。
 そう思いながらお皿を手に持つと、ひやりとした感触を指先に感じた。嫌な予感がしたが、食べない訳にはいかない。
 私はカレーライスをスプーンですくい、口に運ぶ。そして次の瞬間、口の中に冷たい食感が広がった。
 嫌な予感は、どうやら当たってしまったらしい。
 カレーライスは、氷のように冷たかった。