大人オリジナル小説

Re: 死に方を知らない君へ。  ( No.49 )
日時: 2014/02/06 21:12
名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU

――自傷行為を終えた後、いつも私の心は真っ白になる。
 何でこうなるのかは、自分でもよく分からない。
 私はへなへなとベッドの上に座り込み、真っ白な壁を見つめて放心していた。

 しばらくしてからはっと我に返った私は、弾かれた様に立ち上がってある棚の前に向かった。
 その棚は木製で、中は二段に仕切られている。上の段には普段学校で使う教科書類が、そして下の段にはアルバムが収納されている。
 私は迷わず、アルバムの1つを手に取った。
 なぜ、私がアルバムを手に取ったのか。その理由はとても単純だった。何となく、見たかったから……ただ、それだけ。
 私はアルバムをそっと床に置き、ゆっくりとページを開いていく。

 見なければ良かったのだ。見なければ、あんな思いをする事も無かったのだから。
 それなのに……私は、見てしまった。

 次の瞬間、私の目に映し出されたのは――他人から見ればなんてことない普通の家族写真。
 一体何年前の写真だろうか。写真の中のお父さんとお母さんは満面の笑みで、私は幸せな――いや無邪気な笑顔で写真に写っていた。
 それは家族が壊れる前に撮った、家族写真。