第十二声「どうもこんにちは『緑』です。」
いつものように公園で魔夫ちゃんを待っていても一向に魔夫ちゃんは現れなかった。
どうしてだろう。
私、なんか変なこと言っちゃったかな。
魔夫ちゃん、怒っちゃったのかな。
私のこと、嫌いになっちゃったのかな。
そう思うと涙が止まらなくなった。
私、もう魔夫ちゃんに会えないのかもしれない。
公園のベンチから立ち上がって走り出す。
小学校に行ってみよう。
魔夫ちゃん、きっと授業が遅くなっちゃったに違いない。
私嫌われてないよ。
大丈夫。
私は息を荒くして走る。
早く魔夫ちゃんに会いたかった。
私のこと、嫌いになってないよねって聞きたかった。
嫌いじゃないよって笑って欲しかった。
「………っ」
全力で走っていたから、曲がり角で思いっきり転んでしまった。
「あ、れ………………?」
痛くなかった。
前まで、痛かったのに。
違うよ、私は嫌われてなんかないよ。
大丈夫なの。
大丈夫だから。
痛みを感じて。
涙が止まらない。
道端に落ちていた木の棒を掴んで腕に突き刺してみた。
痛くない。
痛くない。
嫌だ。やだ。
やっと痛くなったのに。正常になれたのに。
もう一度。もう一度。
何度も何度も木の棒を突き刺す。
痛くない。
魔夫ちゃん。
助けて。
痛くないよ。
私、魔夫ちゃんがいないと痛くない。
「魔夫ちゃん………………っ」
ねぇ、教えて。
一体魔夫ちゃんに何があったの。
+ + + +
そうして私は魔夫ちゃんを探すことにした。
きっと何処かにいる、そう信じて。
私を嫌いになってなんか無い、そう信じて。
痛みを取り戻したい。
痛みを感じるために魔夫ちゃんを利用していたのかもしれない。
でも今は純粋に私は魔夫ちゃんに会いたい。
また笑って欲しい。
自分で痛みを取り戻すかもしれないと思って毎日ナイフで腕に傷をつけているけれど痛みを感じることはなかった。
そして私はまた呟く。
「………………助けて」
濁った目の自分を見つめながら。
〜end〜
十二話目です。
今回も一人語りです。
終盤に近づいてきました。
まだまだ頑張っていきます。
短めでごめんなさい。