第二声「どうもこんにちは『謎』です。」
つつーと本棚に並べられている本をなぞる。
そうして、ずっとただ並べられている本の題名を眺めていると、その文字がぐちゃぐちゃに混ざってくる。
文字がただの蟲みたいだ。
その感覚が恐ろしく好きで気持ちよくてたまらない。
その感覚はそうだな、春先に道端で咲くタンポポの花を満面の笑みで踏み潰す感覚に似ている。
私はある本に手をかける。
さてと。
本を読もうか。
私がこの本を閉じるだけで登場人物が皆死んでしまう。
そんなスリルを味わいながら、文字を辿ろう。
+ + + +
今日も僕と彪は一緒に登校した。
今日も昨日と同じように遅刻だったけど。
今日の授業は一年が昨日入学してきたから、全部ガイダンスで終わった。
部活も二年と三年だけは始まり、前までの春休みの気分が拭われた気分だ。
さっさと帰ろうと思い、肩に鞄を掛ける。
「おい、煤木」
窓を見てたまっていた男子生徒の一人が僕を呼び止める。
めんどくさいなぁ。
でも、人付き合いは大切だし、窓のほうに近寄った。
「何?」
僕を呼び止めた奴の他にも三人男子生徒がいた。
その三人は全員窓から見えるグラウンドに釘付けだ。
「お前さ、霧峰と付き合ってんの?」
霧峰?
霧峰・・・。
あぁ、彪のことか。
苗字で呼ぶことがないからすっかり忘れてた。
そういえばそんな苗字だったな。
「付き合ってないよ。ところで、なに見てるの、皆して」
男子生徒の間に割り込む。
そうすると迷惑そうに男子生徒たちが眉間に皺を作った。
「あ?あぁ、女子テニス部だよ」
グラウンドの一角に作られたテニスコートがみんなの視線を浴びていた。
「女子テニス部って皆可愛いからな〜。みてて和むぜ」
部活に打ち込む部員の中に彪の姿が見えた。
彪も頑張ってるな。
だからと言って僕が部活に入る理由にはならないけど。
「霧峰俺のタイプなんだよねーだからお前が付き合ってなくてよかったよ」
僕を呼び止めた生徒が彪を見てうっとりしている。
「ふぅん」
良いんじゃないの。
彪、面倒見いいし。
「あ、そういえば煤木、いかなくていいのか?」
「何処に?」
僕が生徒のほうを見ると、呆れたような目で見られた。
「図書委員だろ?」
「うん」
押し付けられた仕事だけど、帰宅部だし、仕方ない。
それがどうしたの。
という顔をすると生徒は丁寧に教えてくれた。
「放課後、プリントを図書委員長に届けろっていわれてたじゃん」
あ。
すっかり忘れてた。
生返事だったし、眠かったから、全然話聞いてなかった。
「・・・ご丁寧にどうも」
教えてくれた男子生徒に感謝しつつ、窓を離れる。
「おー。おつかれー」
だらしなく振られる手に答えてから教室をでようとドアに手をかけた。
振り返れば、僕がいたところはもう男子生徒たちに詰められてなくなっていた。
廊下に出るとあたりは静寂に包まれていた。
僕と同じような帰宅部はもうとっくに帰ったのが大多数だろう。
さっきの四人のように部活中の女子を見て日々のストレスを晴らしている物好きもちらほらいる。
しばらく歩くと図書室が見えてきた。
図書室にはよく生徒がたまっている。
本を読む目的としては全然使われていないのだ。
「・・・失礼します」
う。埃っぽい。
彪なら全力で逃げそうだ。
「いらっしゃい」
入口に一番近いところの本棚に女子生徒がいた。
今、気付いた。
なんできづかなかったんだろう。
ぐるぐると回る僕の頭なんてお構い無しに彼女は続ける。
「どうかしたの?」
はー、息を吐き出して落ち着こうとしたけど上手く行かない。
どうしてこんなに僕は動揺してるんだろう。
ただ、女子生徒が話しかけてきただけじゃないか。
「・・・あの、図書委員長を、探してまして」
あ、れ・・・?
なんだろう。この感じ。
ぐちゃりと心臓の裏を冷たい指でなぞられるような、この感じ。
制服をしっかりと着こなした彼女の顔色は何故か少し悪いような気がする。
その顔つき。目つき。声音。
「あの・・・」
「はい?」
僕の口が勝手に動く。
いうな。
本能がそう告げたのに。
「どこかで・・・会った事、ありませんか?」
にぃ。
一瞬、彼女の口がゆがむのを僕は見逃さなかった。
いや、見逃せなかった。
「そんなことはありませんよ。あなたの勘違いでしょう」
僕が何かを言い返す前に、彼女がまた何かを言うべく口を動かす。
「私が図書委員長です。名前は城吾魔夫。よろしく」
差し出されるその手に何故か僕は答えられなかった。
僕は手の変わりに頼まれていたプリントをのせて挨拶もせずに図書室を出た。
廊下を足早に歩く。
全身の鳥肌が、収まらない。
「・・・どうしたの?」
その声に顔を上げる。
すると珍しく心配そうな顔をした彪が廊下に立っていた。
「・・・?」
息が荒く、呼吸が上手くできない僕に近寄って背中を撫でてくれた。
落ち着いた僕に彪は優しく微笑む。
「一緒に帰ろ。部活、終わったから」
「・・・僕を探してくれたの?一緒に帰るためだけに?」
少しだけ笑ってそういってやると彪は顔を赤く染めた。
「そ、んなわけないじゃない!ばか!変態なんじゃないの!?」
僕の背中を今度は叩いてくる彪。
そんな痛みに苦笑する。
ふと、廊下に立って会話する女子生徒二人が目に入った。
何の意味もなく、聞き耳を立てる。
「図書委員長ですよね?このプリント、お願いします」
あれ?
あれ? あれ? あれ?
「はい。たしかに貰いました」
あれ?
第二声〜end〜
二話目です。
はい。長くなってしまいましてすみません。
急いで書いたので、日本語が変だったり、誤字があったりするかもしれません。さらに、分かりにくいかもしれません。
そのときは、すみません。
魔夫ちゃんは、一体誰なんでしょうか。
それを読者さんに疑問に思ってほしいです。
次はいつになるか分かりませんが、その時は、お願いします。
あ、それと、まちがえてガジョベーとして書いてしまいました。
揶揄菟唖=ガジョベーです。
ごめんなさい。