大人オリジナル小説
- Re: 怖い、怖い、でも好き ( No.21 )
- 日時: 2011/07/28 16:04
- 名前: 伶香 ◆J3qVnVGrWg
今中高生に流行りのメイク会社のチークを盗めばいい、そう、音野は言った。
無理に決まってる。だって、万引きでしょう?
「…」
「大丈夫?来夏」
「うん…」
「で、なんて?」
資雄先輩なら、分かるだろうか。
「万引きを要求されたの」
「はあ?万引き?」
こくん、と私はうなずいた。
はああ、と資雄先輩がため息をつくと、その要求してるものは、と聞いた。
「…チーク」
「はあ。あそこの…。ちょっと待ってて」
そういって、学習室を出た。いったい何をする気なんだろう、と追おうと思ったが、足が思った以上に動かなかった。
数分後。資雄先輩は戻ってきた。スクール鞄を持って。
「これのことかなあ?」
コロン、と私の手のひらにそれを置いた。
要求されたものと同じチークだった。
「え?」
「…ふふ、それ、私の妹にあげようと思ったんだけどね、『いらない』っていうから、どうしようと思ってて…ちょうどよかったわ」
「なんか、すいません」
「ううん。私もそれいらないから」
見れば、値札も貼ってあるし、シールも何も貼ってない。開封もされてない。盗んだようにも見える。
資雄先輩に聞けば、これは紙袋に「何も貼りつけなくてもいいです」って言ったらしい。
これだったら…なんとかなるのかなあ。
うつで悩まされることも、ないのかなあ。
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