「来夏…」
惨めな姿を見せて、学習室で泣いた。
資雄先輩が大丈夫だから、と声をかけてくれる。
大事で、仲間だと思ってた美桜が裏切った。
酷いよ、美桜…!友達だと…親友だと思ってたのに…!
何でも委員長が頂点に立ってるなんて…。
「いや…いや……」
「来夏!」
「なんでなのよ、なんで私じゃなく音野が委員長なのよ!」
「ら…いか…」
取り乱してるなんて関係ない。私だってもう限界なんだ。
あの時、音野の前に委員長に立ってたら…。
「私が音野を苦しめることができたのにね…!!」
「だめよ、来夏。そんなんじゃ、同罪じゃない」
「関係ない…。あいつはずっと前から…私の事、陰で苦しめてたんだ」
4年生のころ、はじめて音野頼子と出会った。何でも転入生らしく、孤独なんだろう、と思って声をかけた。
すると気が合って、とっても仲良くなった。
音野はとても優しくて、泣きたいときは一緒に泣いてくれて。
でも、5年生のころだろうか、また一緒のクラスになると、違う子と楽しくしているのが見えた。
これで、学校にもなじんだんだろう、とほおっておいた。
音野の前を通ると、陰口が聞こえたんだ。
「“蒼井さん”て…死んでほしいよね」
その時、ショックを受けた。
音野は気づいてなかったのだろう、もっと続けて言う。
「ブス」「消えてほしい」「ぶりっ子」
そんなこと、信じたくなんかなかった。
だから、はっきり言おうとした。
「頼子」
「あ!来夏あ。この頃付き合えなくってごめんね!でも、雨宮さんがいるんだよね!楽しいでしょ?」
「そ、うだけど…あの」
「ならよかったあ!よりこ、あの子たちと付き合うのとても楽しいの。姫野さんはいつもお茶菓子くれるし!姫野さんの家は茶道が名門なんだってえ!」
「…」
「来夏のこと、好きだけどあんま付き合えなくてごめん。今度、姫野さんの家行くんだ。行こうよ!ね!」
「…う…ん」
言うことなんて、できなかった。
その時から恨んだ。恨んだ恨んだ。
6年のときにやっと離れられてほっとした。
そして「音野さんって、受験するんだって。名門の白薔薇女学園に!」という噂も聞こえた。
これで、やっと別れられる。と思ってた。
けど、音野は、白薔薇に落ちた。
そして、私も受験した身。日登美女学院に私と美桜は合格した。そして、音野はこの学校を第2志望にいれていて、当然合格。
こんな風に不運な人生なんだよ。
「そんな…音野委員長って、良い人だと思ってたのに」
「そうそう委員長なんて、良い人なんていないのよ」
「…日登美女学院も、さびれたわね」
日登美女学院はいい学校と評判だが、いじめが多発。
この学習室にも7人も別室がいるのだから。