大人オリジナル小説

Re: カケラ ( No.13 )
日時: 2011/08/29 17:24
名前: 海月

「お。吉澤、クラス同じだったんだー」

環は、吉澤と呼ばれた…吉澤 春菜の方へと駆けていった。

ちなみに吉澤と、苗字呼びなのは中学校時代、「はるな」という名前の女子が1クラスに3人も居たからだ。

「久しぶりー!卒業式以来じゃん」

「だよねー。また馬鹿やろうなー」

吉澤は一般世間で言う、ギャルというやつだ。亜子もギャルのうちに入るのだが、亜子はそれを否定している。

「あ、吉澤髪染めたねー」

「うん。藤高、髪染めOKだったから来たようなもんだし」

吉澤の髪はブラウン系の色で染まっている。後で言っていたがハニーブラウンという色だそうだ。

染めているといえば亜子も綺麗な赤茶色だがあれは地毛だ。小学校の時から亜子とは仲が良いが、小学校の時からこの色だった。

パーマはかけているようだが。

「はは、そんだけ?」

「うん。そんだけに決まってんじゃん。てか環は?染めないの?」

「んー…うちは親が五月蝿いからねー…」

環は自分の黒と茶色が混ざったような色合いの髪を結構気に入っていた。染めるつもりは更々無い。

「そっかぁー。環が染めたら、絶対似合うと思うよー」

「そうかな?えーでも、春菜のハニーブラウンもめっちゃ似合ってるよ」

とお互いを褒めた。ギャルの間でお互いを褒めるのは日常茶飯事だ。たとえそれがお世辞でも。

ここに亜子が自分はギャルじゃない、と言う理由がある。亜子は物事をはっきりと言う性格だ。そんな亜子にとってお世辞は、最も嫌いなものだった。

「たーまき!ちょっと来て!」

「…うん。ごめん、呼ばれたから」

と環は春菜に断りを入れ、亜子に向かって歩き出した。


亜子の目の前に行くと、亜子はにっこりと笑った。

「…何?亜子」

「まだ利用してんの?あの子のこと」

あの子とは春菜のことだ。亜子も春菜のことは一応知っている。中学校時代に同じクラスになったことがあるのだ。

「…春菜は、良い子だよ。何かあったらすぐに教えてくれるし、友好関係広いし。有効に使わないと」

環はさらっと言い切った。環は春菜のことを道具としか見ていない、と思わせる発言だった。

「でも、それ、春菜ちゃんは…」

気が付いてる、と続けようとした。

そう。春菜は環に自分が道具としてしか見られていないことを知っている。正確に言うと亜子がうっかり口を滑らしたのだ。

「分かってるよ、春菜は。それでも私の近くにいるの」

可笑しいよね、と環は自嘲気味に話した。

「私のことが恐ろしいんだってさー。逆らっちゃいけないってギャルたちに言ってたみたいだし」

亜子は驚きを隠せなかった。それは、環に対してか春菜に対してか…自分でもよくわかっていなかった。

「…春菜ちゃんは、中2の時…同じクラス、だったもんね」

「……そう。あの事を知っている数少ない人間なんだから」

それだけ言うと環は「じゃあ行ってくるね」と言い、春菜のもとへともどって行った。

To Be Continued・・・