大人オリジナル小説
- Re: カケラ ( No.14 )
- 日時: 2011/08/29 17:25
- 名前: 海月
しばらくすると、担任らしき教師が教室に入ってきた。
「おー、席着けー。…今日から1年3組の担任になった斎藤だ。よろしく」
熱血系の、人当たりのよさそうな男性教師だった。軽く自己紹介をし、授業の聴き方などの説明を受け、その日の授業は終わった。
「環ー帰ろー」
「あーうん。じゃあ久々にみんなで帰ろうよ」
環が提案するとすぐ近くにいた穣が「賛成ー!」と言ってきたので5人で帰ることになった。
下駄箱につき、上履きと靴を履き替え歩きだす。
少し歩いたところで環がずっと後ろを歩いている女子の存在に気がつく。
そしてその女子をじっ…と見つめる。尤もその女子は環の視線に気が付いてないのだが。
「…環?どうした?」
環の目線を疑問に思った亜子が問う。
4人の目線が環に集まる。
「え、あ、あぁ…何でも」
ない、と続けようとしたところでいきなり誰かが大声をあげた。
「あぁぁ!朝の子じゃん!」
声をあげたのは皓我だった。女子…愛美の方もさっきまでは俯きながら歩いていたが、皓我の声に驚き顔をあげた。
「……え、あ、朝の…!」
愛美も相当驚いているようだ。歩いていた足が止まっている。
「え、何々?知り合い?」
2人の様子が気になる穣。
「あー…朝言ったじゃん。女の子のお話の相手してたら遅れたーって」
「あー言ってたね。で、その子の話を聞いていた、と」
環は飲み込みが良いのでその時の様子を脳内で再現できたようだ。それは俊介も同じだったようで「あー納得」とつぶやいていた。
「えっと…家、こっちなの?」
二コリ、と微笑みながら愛美に話しかける環。
「は、はい。最近、引っ越してきたんです」
引っ越し…という単語が出てきたときにピクリ、と反応する穣と亜子。愛美は少し気になったが口には出さなかった。
「そうなんだ!上沢(かみざわ)方面ってさ、同学年の子…っていうか家が少なくて。嬉しいな!」
環の言うように、上沢方面には家が少ない。殆どが山なのだ。環らの住んでいるところはちょうど山のふもとになる。
藤高等学校は上沢方面から徒歩30分はあるところにあるのだ。上沢方面の殆どの高校生は徒歩10分ほどのところにある高校に通っている。
上沢方面から藤高等学校に通っているのはこの場にいる6人だけだ。
「ね、名前何ていうの?私は安藤環。よろしくね」
「え、えと…春日、愛美って言います…」
「愛美ちゃんだね!よし、覚えた」
すっかり仲良くなった環と愛美。そんな2人の様子を見て亜子が、
「松山亜子。よろしく愛美」
と亜子がいきなり愛美のことを呼び捨てにするため愛美がテンパったらしい。
「ふぇ、あ、うん!よろしく亜子…ちゃん」
「あはは!ちゃんは要らないけど今日はそれで我慢してあげるー」
それから3人の男子も自己紹介をし、すっかり愛美もこの5人に馴染んだようだった。みんなを呼び捨てにすることにもなり、愛美もようやくそれに慣れていた。
「あ、私の家ここ」
と愛美が指をさすのは新築の洋風の二階建ての家。きっと中も可愛らしい物で溢れているのだろう。
「あ、結構家近いね」
と、環が自分の家を愛美に教える。
「愛美の家の通りの突き当たりを左に曲がってすぐのところが私の家。今度遊びに来て!ほかのみんなの家も教えるから!」
「うん!」
「じゃあね、また明日。あ。朝もさ、一緒に学校行く?」
という亜子の提案。みんなも、「そうしようよ」とか「愛美が迷惑じゃなければ…」などと言っている。
「え、いい、の?」
「良いに決まってんじゃん!じゃあ明日7時に愛美の家行くから!」
半ば強引に、だが一緒に学校に行くことになった。愛美は嬉しくてたまらなかった。
「分かった!また明日!」
(よかった。お母さーん!友達出来たよー!)