大人オリジナル小説

Re: カケラ ( No.16 )
日時: 2011/08/29 17:26
名前: 海月


環が連れてこられたのは教室に最も近いところにある女子トイレ。

ベタだな、と思いつつ先輩の後についていく環。

「ねぇ、私の顔覚えてる?」

トイレに入ってすぐに2年の名前も知らない先輩3名が環の顔を覗き込む。

真ん中の化粧の濃い人がどうやらリーダーらしい。

「…知りませんけど」

しれっと言う環に先輩はますます怒った。

「はぁ!?中学ン時、あんたに虐められたんだよ!」

「そうそう。まさか高校同じだとは…。今度はこっちがアンタを虐めてやるよ!」

くすくす笑いながら先輩3名は環を残し、トイレから出て行った。

「……笑わせないで」

そう呟いた環は愛美の前では見せたことの無いような歪んだ顔をしていた…。





環がトイレから戻ってくると、真っ先に声をかけたのは愛美だった。

「環、大丈夫だった!?」

愛美は環への不安と亜子たちへの不信感で気が狂いそうだった。

「え、あぁ、うん。普通に」

環は愛美を安心させるように微笑む。だが、環にとってそれは環に対す
る不信感へと変わるものだった。

「……そっか」

「?」

環は愛美の態度が気になったが、深く追及するつもりはなかった。

「愛美嬢?そんな顔してたら俺様心配しちゃう」

穣が愛美の顔をのぞきつつ、こんなことをいう。こんな言い方でしか励
ませられないが、これは彼なりの励まし方だ。

「…穣…うん…」

やはり、愛美には元気がなかった。そんなこと眼中に入れていない人物が2人。

1人は亜子。さっきからしきりに携帯電話を弄っている。2人目は俊介。いつものごとく読書をしている。

ちなみに今日読んでいるのは『人間失格』。



ぎくしゃくしたまま休み時間は終わり、授業開始を知らせるチャイムが鳴った。