大人オリジナル小説
- Re: あの時の記憶〜キズと飴〜 ( No.4 )
- 日時: 2011/09/02 21:17
- 名前: バード(,,・θ・) ◆Nlab369rtc
1章 episode1「罪を重ねた少年たち」
生温かい液体が俺の口に溜まっていく。吐きだせば楽になれるのならもうとっくにそうしているだろう。俺が何をしたか?そんなの俺が一番知っている。
「テメェがヘマしたせいでマブダチがサツにつかまっちまっただろうがよ!!」
俺はサンドバックのように殴る蹴るを散々させられる。仕事に失敗したからだ。
「罰として一日分の報酬はなし。本当だったら殺してたがお前は届ける仕事はしたから許してやる。それとヘマしたのはこいつじゃない。違うだろ?悪いのはサツに捕まった野郎の責任だ。」
俺の仕事が何かは口が裂けても言えない。たとえ誰だろうと言えない。俺の名前は木更津義人。通称キズト。俺にはそのあだ名がぴったりだ。目の下には切り傷、切れ長の鋭い目つきに皆は俺のことを避けて行く。それが正しいと俺でさえ思うのはおかしいことだろうか?そんなことを考えていたらいつの間にか残っていたのは俺とボスと呼ばれる仕事の長だけだった。
「お前良くこんな仕事続けていられるな。ほらよ。棒付きキャンディー。お前好きだったよな。」
ボスは俺に優しく話しかけてくれる。
「ありがとうございます。ボス。」
そう言いつつ俺は棒付きキャンディーの袋をとりポケットにぐしゃっとしまう。俺にとってはかなり単純な動作だったはずがよろけてしまう。
「さっきの後遺症か?まぁ無理もねぇよ。っつかお前が一番若いんだからこうなって仕方ないんだよ。俺が始めたこの仕事は今では闇に葬り去られる悲しい末路をたどってるんだよ。それと俺をボスって呼ばないでくれよ。英輔って呼んでくれ。」
ボス……ではなく英輔さんは笑いながら俺に訴える。その表情はどこか悲しげであった。俺はさっきのキズがどれほどのものか見てみる。一部肉が見えていたり出血の量がかなりマズイじょうたいになっている場所もあった。左手の指は血が止まっているらしく真紫になっていた。
「ありゃりゃぁ……こりゃ早くしないと左手使えなくなるな。」
英輔さんはそういうと俺のかたをぽんと叩く。俺の肩を叩いたのは英輔さんの手ではない。
「もしだめだったら義手ですかね。」
「そうしたら俺が金出してやる。お前の両親が成仏しきれないだろ。」
俺の両親はかなり無残な死に方をしている。父親が道端で『ヤクザ』の一件に巻き込まれ惨死。それに耐えかね母親は息子の俺が居る目の前で首つり自殺。
俺を何故生かした?
何故俺を苦しめる?
それが俺にとってはグモンだ。
「ありがとうございます。毎度毎度いろいろさせてしまって申し訳ないっス。」
俺は今英輔さんの下で働くことが生きがいだ。
でも俺は運んでいるモノの中身が何なのかを知らずにこの仕事をやり始め実際この仕事は違法だって気がついたのはここ数週間程度の出来事。俺は何でこんな事をしているのだろうと思ったがなかなか抜け出せない。この仕事の時給は2000円。かなりのもうけになる。しかも簡単であり犯罪の片棒を担がされたことに一切気がつかなかったのだ。疑いもしなかった俺が恥ずかしい。悔やむことは何一つないがあそこで気が付いていればと思う自分が居た。
「キズト。お前とりあえず学校行け。金は俺が負担してやる。」
不意に英輔さんが言った言葉に俺はただただ驚くしかなかった。
「え。いいんスか?」
そういった俺に英輔さんは軽く笑い「ああ。」と言った。そんな男らしかったり人をあがめて何が悪いか。俺は英輔さんに支えられて今まで生きていたと思う。
ほかにもう一人いるけどな。
俺の支えとなってくれているアイツが。
俺今……無性にアイツとしゃべりたくなったのは何でだろう。
next…episode2 「キズト」