序章「……東雲紗綾です。えーと、人見知りなので話しかけてくれると嬉しいです」 あらかじめ決めておいた台詞を一字一句間違えずに言い、それから担任の教師の指示を受けて指定された席に向かう。窓際の一番後ろが私の席だった。 梅雨入りしてまもない六月のある日、私は季節外れの転校生として市立○○中学校三年一組の教室にいた。 普通の、普通の学校生活を送るために。