大人オリジナル小説

Re: あの日にはもう戻れない―― ( No.2 )
日時: 2011/11/25 17:36
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ

第一章 【 本日快晴 】
第一話

 誰も居ない教室に、一人でいるのはやっぱり落ち着く。
 まだ生徒が登校してくるには早い、午前七時五十分。一人の女子生徒が、教室に入ってきた。少女の名前は、白守鈴奈(しらかみれいな)。教室の扉を開けると、誰も居ない教室を見て嬉しそうに微笑を口元に浮かばせた。

「あーれ? 鈴奈じゃん、はえーのな」

「えっ……。あ、おはよう」

 死角に入っていて見つけられなかったのか、教室には鈴奈より先に結城がいた。結城は、鈴奈の落胆振りを面白そうに笑ってみていた。

「結城くんは、なんでこんな早く学校に来てるのよ……」

「あー? お前こそなんでこんな早く来てんだよ。って聞いてやりたいのも山々なんだけど……。俺は、ただの仕事だよ」

 そういい、結城は手に持っていたA4のファイルをひらひらと動かす。鈴奈は、その中身を悟った様で、あぁ……と溜め息をつきながらつぶやいた。
 
 最近、鈴奈達が通っている高校では一つ、小さくも大きな影響力を持ち合わせている噂が存在していた。それは“生徒の一部が薬物に手を染めている”というものだった。この噂が教師や生徒会長の耳に入った時には、授業を取り止めて臨時の全校集会が開かれた。全校生徒と教師や事務員全員が入ってもまだ余裕のある体育館であっても、クーラーが熱気に負けてしまうほどだった。
 その全校集会で伝えられた“噂”の内容を聞いた生徒たちは、隣にいた生徒たちなどと話し合っていた。鈴奈は、その中の一生徒として仲のいい、佐藤倖(さとうゆき)と話していた。結城はというと、その噂を公表した本人であった為、現生徒会長や学校長と共に壇上に上っていた。
 壇上で結城が話したこと、それは衝撃的過ぎて鮮明に覚えている。

「薬物とかに手出してるような社会のゴミと同じ校内に自分が居る。それが俺は許せないね。社会のゴミは社会のゴミに相応しい舞台で生活をして欲しい。ってーか、“覚せい剤”とか使った奴、本当に居んのか? ただの、仲間内での冗談が全校集会で取り上げられちゃって困ってるんですー、とか言いやがる奴居るんだったら、とりあえず俺のところに来い。しめてやる」

 そういって、結城は壇上から降りていた。
 聴衆役の生徒達は全員口を上げぽかんとしていた。