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例え何であっても、
人は人を傷つけてはならないのです。
そして、思いやる気持ちを持つことを忘れない事も
また、大切なことなのです。
それが今の人々にないものであったとして、
人がどう変わって行くのか。
これは、1人の"少女"が経験した、
―儚い姉妹の物語。
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「お姉ちゃん。おかえりー」
「あ、葉月、ただいま」
また…笑ってない。
家のドアを開けるまで、お姉ちゃんは…
絶対に笑ってなかった。
「ん?どうしたの?葉月」
「あ、ううん…別に…」
「そっか…」
呟くように言うと、お姉ちゃんは私に笑顔を向け、
自室に入って行った。
「お姉ちゃん……」
私は薄々気づいていた。
お姉ちゃんが学校でいじめに遭っていることを。
確信している訳ではない。
が、この状況を見ていればなんとなくそんな気がするのだ。
この前、お姉ちゃんが大切にしていたシャーペンが
無くなったと焦って探していたとき、私は友達と外で遊んでいた。
そのとき、公園のごみ箱にお姉ちゃんの持っている
シャーペンを見つけたことがあった。
だけど、お姉ちゃんのシャーペンじゃないかもしれない。
そこまで気にする事もなく、私はあの日を終えた。
そしてまたある日、お姉ちゃんはズブ濡れになって帰って来た。
「トイレ掃除で扱けて水をかぶった」とか
何とか言って笑っていたけど、私は何となく気づいていた。
「水を"かぶった"」訳ではなく、
「水を"かぶせられた"」のではないか。と。
私は、その日を境にお姉ちゃんの顔色を確認するようになった。
時々、泥まみれになって帰って来たり、
カバンに付けていたお気に入りのぬいぐるみの右手がもげてたり、
それでもお姉ちゃんは、「泥団子投げをやって馬鹿した」、
「こけて右手が取れた」っていつも笑ってた。
が、お姉ちゃんの発言とその物の状況からすると、
いつも矛盾している。
それから、少し経ったある日。
私は少し気になってお姉ちゃんの部屋に入った。
その日はお姉ちゃんが出かけていたため、私には好都合であった。
そして、机の中・タンス・カバンと色々調べて、最後にブレザーに
手をかけたとき、ポケットの中に紙が入っていた。
その紙を開くと「しね」の二文字が赤いペンで書きとめられている。
赤い文字は何かで濡れて、少しにじんでいた。
そして私は確信した。
お姉ちゃんは、
―いじめに遭っているということを。
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