大人オリジナル小説

Re: 暗闇の世界で、翼は溶けていった。 ( No.11 )
日時: 2012/04/04 15:01
名前: 来夏 ◆HpxJ7yQkz.

 episode  鹿島龍太郎

  ――人に翼があるとしたら、それはどういう意味でしょう?

 
 大切な人達が、そばに居るって事じゃないか?
 元々あるなら、それは家族の翼。死んだりしても、それはきっと残ってるんじゃないかって。

 大切な人達が居なくても、それでもその人を生んだ母親の翼があるって思う。

 これ、答えになってないかもしれないな。


 ***


「え、化学薬品まで手を出そうとしたのか?」
「剛が、そう言ってた。野村が流石にやめとけって言ってた。まぁ野村はマッチでいいだろって言ってたけど」
「どっちにしろ、良くないだろ」


 紀本と恭平が、他人から見たら危険な会話だと思われることを話していた。紀本はテニス部で、今日はオフだったらしい。だけど紀本は自主練をしていたらしい。俺と恭平は二時間の練習が終わり、やっと帰る所だった。
 そこで、一人で帰ろうとしていた紀本と出くわしたのだ。


「木村が何でそんな事を、知ってるんだ?」
「剛、科学部だから。理科室にあいつ等が来るみたいでさ」


 そう言いながら、紀本は呆れていた。そういえば、紀本はいつも木村と一緒に居る。
 四之宮達は、この二人の事を色々言っている。大半は悪口だった。


「四之宮が怖い、って言ってたよ。野村はマッチだけ借りて、化学薬品は持ち出さない様にしたけどな。日村とかは化学薬品は臭くて嫌だって言ってたらしいけど」


 汚れた石で出来た校門には“宮桜中学校”と描かれた石碑がはめ込まれていた。その前に、俺達は立ち止まって話す事にした。


「……でも、四之宮は信用されてるから先生に言ったって、どうにもならないよな」
「それが厄介だから、剛も言えないんだ」


 紀本はまた溜息をついた。いい加減にしてくれとでも言う様に、そんな感じだった。
 


「……あれ、野村」


 俺はふと歩いてくる男子に気づいた。良く見ると、それは野村だった。野村はイライラしながら、制服のズボンのポケットに右手を突っ込んでいた。
 野村はこっちに気が付いた。そして紀本に話しかけていた。それは、木村の事だった。


「紀本。木村と出来るだけ一緒に居ろよ」


 目つきが元々悪いから、怒りの表情を顔に浮かべているだけで不良にも見える。麻生よりもっと怖い。


「……剛と?」
「あぁ。木村、かなり文句言われ続けててよ。今は科学部の活動が終わったらしいんだけどよ」


 野村はそういいながら、頭を掻いた。イライラしているのは、木村の事なのだろうか?
 

「化学薬品、無理矢理奪ったんだぜ? 四之宮、明日はあいつに色々やるんじゃねぇかな」


 そう言いながら、野村は歩いて行く。不気味な言葉を残された紀本は校舎に視線を映した。


「……剛、明日怪我しながら来るのかな」
「野村は味方はしないだろうけど、情報だけは教えてくれたな」
「木村と仲が良かったっけ……?」


 そんな事を、二人は話していた。