大人オリジナル小説

Re: 暗闇の世界で、翼は溶けていった。 ( No.12 )
日時: 2012/04/04 15:05
名前: 来夏 ◆HpxJ7yQkz.

  episode 千原南


  ――人に翼があるとしたら、それはどういう意味でしょう?

 翼かぁ。翼があったら、きっとどこにでも逃げられるんだろうな。
 でも、その為に翼はある訳じゃなかったら……

 ごめん、バカだから翼がある意味を考える事は出来ないや。
 でも、これだけは言えるよ。

 翼って、その人を支えるものだって。


 ※次の日の朝。
  日時は九月ごろ。


 ***



「……」


 保健室の白く綺麗なベッドに寝転びながら、隣に寝ているある男子に話しかけた。カーテンで仕切られてるから、別に問題は無い。

「古川、教室に行く?」
「あ〜? 眠いから行かねぇ。匠と一馬と大和とかがしてるだろうから行かねぇ」
「最近さ、古川参加しないよね」


 古川流星。あたしと同じ、榎本や雛を虐める立場の男子だった。唯一仲がいい男子は、古川ぐらいだった。
 古川も、あたしと同じく保健室で寝ていた。

 それで、今聞いたらかなり口調が悪い返事をされた。そんな事を気にしないでさらに聞いた時だった。

 いきなりカーテンが勢い良く開いた。眉間に皺を寄せながら、アタシを見た。そして口を開いた。口元にはアザがあった。それは、雛に抵抗された時のものだ。カラコンを入れているので、瞳は青色だ。古川は、典型的な不良と言われてた。

「めんどくせぇんだよ。行くのが」
「古川、それがいつまで通じるの?」
「知らねぇよ。千原だって最近参加してねーじゃねーか」

 事実だ。けどさ、アタシは雛みたいに止める事は出来ない。
 アタシは、紘歌に怯えてる。紘歌には沢山仲間がいる。
 ただ、その天下はいつまで続くんだろうか? 頭の悪いアタシには、予想が出来ない。


「そうだね」


 古川の言葉に、あたしは頷いた。虐めに関してはどっちでもいい。けど、紘歌が怖い。


「……古川」
「何だよ」
「……紘歌が、怖い」


 そんな事を、古川に呟いた。ヤバイ、身体の震えが止まらない。
 紘歌のあの笑顔は、恐怖の対象とも言える。あんな笑顔で、榎本や雛を虐めている。
 普通に、笑っていて、怖い。


「……ああ、そうだな。あいつは怖い。けど、あいつを裏切ったら、俺等が殺されるっての」


 そう言いながら、古川は起き上がっていた。アタシは枕から離れて、古川を見ていた。


「……チッ、めんどくせぇ。こんな事に参加しなきゃ良かったぜ」