episode 四之宮紘歌
一人部屋で勉強をしていたが、あるメールで勉強を中断する事になった。あたしは、ある人に電話をかけていた。
「抜けるって、どういう意味か分かってるよね?」
『抜ける。悪いけど、俺は抜ける』
若林がメールで言っていた事。
――お前等のグループから、抜ける。
色々あるから、抜ける。
たった二行のメールで分かった事は、若林がこのグループから抜けると言う事だった。
あたしは、イライラして若林に電話をかけた。一体、どういうつもりなんだろう。
「裏切ったら、工藤と同じ事になるんだよ? 今なら、許すよ」
『俺は、それでも抜けるっての。――明日、楽しみにしてろよ』
「は? あんたをターゲットにする事?」
宣戦布告? このあたしにか。あたしは笑いながら、若林にそう返した。だが、若林は電話の向こうで笑っていた。
『ちげぇよ。お前にとっては、ビックリするってイベントだ』
その言葉に返そうとしたが、若林は電話を切った。あたしは「ふーん」とつぶやきながら、携帯電話を置いた。
これで二人目か。けど、南や古川も最近参加していない。さて、仲間をまた増やさなきゃいけないかな。
佐倉辺りを脅そう。みんなあたしに怯えてるのは、もう気づいている。
「……あー、勉強しなきゃまた怒られるね」
この家は、頭が良くなきゃダメだ。勉強に関しては、嫌いでもないからいいのだが。最近紘美に対して、親はスパルタをかけている。
頭が良ければ、何だってしていいって親は言う。だから、あたしはそれを信じて色々やって来た。虐めに関しても、色々。
「だって、あいつ等が悪いんだから。こうやってあたしが努力していることも知らないで! 悪いんなら直接言ってくればいいのに!」
榎本は絶対に許さない。あたしの努力も分かりさえしないで、ああいっているあの神経だけは、許さない。
裏切った工藤も若林も、絶対に許さない。
「……絶対に、追い詰めてやる。椎名みたいにね」
***
「紘美! 何でこんな点数なんだ!」
「紘也達はいいのに……」
こうやってあたしや紘美、紘兄はスパルタ指導を昔から受けている。でも、紘美はまだいい点を取ってる。
「親父、お袋、それくらいでいいじゃん。紘美、クラストップなんだし」
「でもな、こんな点数じゃ……」
「紘美に勉強教えるから、それでいいでしょ?」
だから、あたしは虐めを始めたんだ。ストレス発散もあるが、それ以前に――
あたしの家の事を知らないから、虐める。理由もありでね。