大人オリジナル小説

Re: 暗闇の世界で、翼は溶けていった。 ※少し修正中。 ( No.35 )
日時: 2012/03/21 21:37
名前: 来夏 ◆HpxJ7yQkz.



 episode 音原霞


 給食の前に体育、と言うのは良い方なのだろうか。あたしは授業なんてどうでもいいのだが。


「そういえば今日、男女体育館一緒だったっけ?」
「一緒ですよ」

 どうでもいい。そんな話題を話せるのも、普通の人だから出来るのだろうか。


「D組の女子はドッチボール、D組の男子はバスケだぞー!」


 担当の声が体育館中に響く。それにしても、ドッチボールは危険だと思う。またあの三人に定めるんだろう、あいつ等は。
 男子はステージ前に集まって、色々なグループに分かれて話していた。女子は入り口近くのコートに散らばっている。


「そういやさー、四之宮さん達また虐めてるんだっけ?」
「何か若林ってのもターゲットに入れたらしいよ」
「うわ、うち等良かったねー。あんな人と同じクラスじゃなくて」


 人の噂は七十五日、って言うけどもう広まっているんだ。しかもあの男子も……。
 

「……傘また買わなきゃ」


 髪を一つに結びながら、小さくあたしは呟いていた。


 ***



 あたしは必然的に外野だ。そしてあたしは試合を見物する。たまに投げて、一人に当てる。やる気など、あまり無い。
 

「音原さーん! ちょっと誰か当ててくんない?」


 日村からボールを受け取り、あたしは投げる。この流だと、あの三人か。あたしは相手チームだった椎名に投げる。
 椎名の右肩にボールは当たった。それを見て、日村が不気味な笑顔を浮かべる。
 

「おー、分かってるじゃん!」


 ただ関わりたくないから、あんた達が望む人へ投げるだけ。あたしは正直体育はしたくない。めんどくさい事になるだけだから。


「椎名、アウト!」

 担当の声がコート内に響く。
 相手チームは三人。残っているのは、名倉と芳田と新野か。そして私の所は、四之宮と工藤、榎本だ。

 嫌な予感しかしないのは、あたしだけだろうか。


「新野さん、こっち!」

 
 和田が新野からボールを受け取り、投げる。バスケ部だからなのか分からないが、それはとても早い。


 ――試合は別に何も起きないからいいけど、さりげなくターゲットに当てようとしたり、責任を擦り付けるのは当たり前だった様な。


「……」


 いつの間にか工藤がボールをキャッチしていた。そして工藤は、容赦なくボールを投げる。若干怒り顔だった。


「きゃっ!」


 名倉が慌てて避けている。転がってきたボールをキャッチした三並が、今度は新野に投げる。


「わっ……」


 新野にボールが当たったが、芳田がキャッチした為にアウトにはならない。


「桃沢さん、はい!」
「お、ナイスじゃん」


 桃沢は芳田からのパスを受け取った。そして次の瞬間だった。
 何かを口にしながら、桃沢は笑っていた。桃沢は榎本の背中に向かって投げた。それはとても早かった。


「――っ!」


 ああ、やっぱりあるんだ。それに桃沢は、バレー部でアタッカーだった気がする。


 ――チーム分けをしても、こうなるぐらいなら体育なんて、無ければいいのに。