大人オリジナル小説

Re: 暗闇の世界で、翼は溶けていった。 ※少し修正中。 ( No.37 )
日時: 2012/04/04 15:17
名前: 来夏 ◆HpxJ7yQkz.

 episode 若林大和


  ――人に翼があるとしたら、それはどういう意味でしょう?

 知らねーから、そういうの。
 考えるの、めんどい。でも、翼って大事なヤツじゃねーかな。
 俺にとっての翼は、多分杏子じゃねーかなって思う。
 つまり、翼は大事なヤツって事だ。



 ***

「お前等、俺より怪我してるよな」
「あたしは怪我してねーよ。琳華と杏子が集中的にやられてた」


 杏子と榎本はそれぞれ、右肩と背中を摩っている。工藤は特に怪我も無いが、体育以外でやられた暴力の痛みはありそうだ。
 俺は隣のクラスの奴等が話しかけてくれるから、いいけど。けど、こいつ等の状況はあまりにも酷い。四之宮がどれだけ怖いか、分かった気がする。

 ジャージのまま、俺達は保健室へ入る。色は紺色で、他の中学よりはマシな色だ。
 俺は袖をまくって、ズボンは半ズボンだ。工藤は白い半袖に半ズボンと言う、ラフな格好だ。杏子と榎本は、長袖に半ズボン。榎本の足にアザがあるのも、気になる。それは俺や工藤も付けたものだから、複雑な感情を持つ。


「先生ー。この三人に湿布お願いします」
「あら、工藤さん達――ちょっと榎本さん! アザがあるじゃない!」

 うるせぇ。いきなり大声を出すんじゃねぇ。耳を塞ぎながら、大声を出す藤原を見る。名前は確か、藤原葉子だった気がする。
 ふとカーテンを閉める音が聞こえた。誰かそこに居るのか? でも今は二人の怪我をどうにかしてもらいたい。
 

「体育の怪我じゃないわね……取りあえず湿布を貼るから。怪我をしている人は?」

 榎本が左手を小さく上げる。杏子は左腕を上げる。右肩が痛むから、上げれないのだろう。
 
「榎本さんと椎名さんね。椎名さんは、久しぶりね」
「……そうですね」

 杏子はそう返した。杏子にとっては、先生は嫌な存在だった筈だ。ただ、杏子は前に言っていた。


『藤原先生は、まだ怪我を手当してくれたからいい』


 信じているのかは、よく分からないけど。
 そんな藤原は、榎本の足のアザを見ていた。そしてこう言った。


「虐められてるの? 椎名さんも、その様子だと……」
「まぁそういう事ですね」
「……ちょっと待っててね。氷で一回椎名さんは冷やしましょう」


 そう言って、藤原は水道の方へ向かった。工藤がはっきり言った事に、杏子は聞き返した。


「……他の先生に見せても、通用しないよ。それに、証拠もあったけど……ダメだった」
「けど、言うしかないじゃん。誤魔化してもきっとバレる」


 工藤の言う通りだとは思う。そして判断は正しい方か? まぁこれが解決するなんて、俺は思ってないけど。


「椎名さん、右肩一回冷やしてね。榎本さんは一回こっちに来て。背中も痛そうだし」
「あ、はい」

 杏子は氷が入った袋を、右肩に当てる。榎本は藤原の後に付いて行く。
 

「杏子、大丈夫か?」
「うん……」
「アンタ等、付き合ってんの?」


 その瞬間、俺は咳き込んだ。お前、一体何を言っているんだ、って言いたくなる。