大人オリジナル小説

Re: 暗闇の世界で、翼は溶けていった。 ※少し修正中。 ( No.45 )
日時: 2012/04/01 22:07
名前: 来夏 ◆HpxJ7yQkz.


 episode 榎本琳華U


 わたしと同じで、雛ちゃ……雛も(ちゃん付けは嫌だといわれたから)、椎名さんも、若林君も、怪我をしていた。
 若林君は頬や足、腕――至る所に、紫色のアザがある。唇は切れていて、とても痛そうだった。
 椎名さんは、目元が腫れていた。再び受けた虐めで、また不登校になりそうで怖かった。
 雛も、若林君と同じ状態だ。ただ、一人だけ水で濡らされていた。

 わたしは、髪をボサボサに切られていた。この事は、わたしの心に傷を作った。それと同時に、限界も来てしまった。

 ***

 このメンバーの中で、学校から一番近い家の人は若林君だった。わたしや雛の家は遠くて。椎名さんの家は若林君の家から少し歩いた所に、あるらしい。

 そんな感じで、若林君の家にお邪魔していた。その理由は、怪我の手当とかだ。
 若林君の部屋は、必要な生活道具が揃っていた。漫画とか、そういうのは無くて。
 ただ、音楽の機械やCDが転がっていた。そして全体的に、赤い物が多い気がする。

「いってぇ」
「みんな、大丈夫?」

 一番マシだったかもしれないのは、椎名さんだった。今は若林君の怪我の手当をしている。雛とわたしも、先に手当をしてもらった。

「あたしは平気だって。けど琳華の方が……」
「……」

 わたしは、ここに来てから一言も喋れなかった。短く切られた髪を見て、明人お兄ちゃん達はどんな反応をするんだろう。

「先生達にこれ見せても、あいつ等平気そうだよな」
「うん。……だから、いつも見ている人達を味方につけるしか無いんだよ」
「でもさー、ウチ等の他に居る? 虐めを良く思ってない奴」

 椎名さん達がそう話している中、ふとある事を思い出した。


「…戸川君は?」
「……そういやあいつ、倒れたな」
「あ、もしかしてあいつ。虐めの事、良く思ってないとか?」


 雛の勘は、的中している。多分戸川君は、良く思っていない筈だ。ああやって叫んだ理由は、分からないけど。


「なぁ」


 若林君はポツリと呟いた。


「……俺、流星と話してぇ。あと、千原に聞きてぇ」


 そして、若林君はわたし達が知らない事実を口にした。


「――あいつが、虐めに乗り気じゃない理由を聞きてぇって思う」